タブレットと人さし指で…美術家・会田誠が「絵を描く」ように書いた物語 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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タブレットと人さし指で…美術家・会田誠が「絵を描く」ように書いた物語

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仲宇佐ゆり週刊朝日#読書
会田誠さん (写真提供 文藝春秋)

会田誠さん (写真提供 文藝春秋)

 美術大学を目指す予備校生が多摩美術大学の学園祭で過ごした一夜を描く『げいさい』(文藝春秋、1800円)は、美術家の会田誠さんによる長編小説だ。熱く切ない人間模様の背景に、知られざる美術界の内情が浮かび上がる。

「自分が属することになった日本の美術界を自分なりに分析し、言葉にして人と共有したいと考えたのがきっかけでした」

 構想は24年前にさかのぼる。美術家としてデビューして間もない頃、「美術予備校物語」を書き始めたものの途中で挫折。その後、現代美術の世界で活躍し、2012年には森美術館で大回顧展が開かれるなど、最も注目されるアーティストの一人となった。

 そして4年前、編集者の勧めで、苦い思い出となっていたこの小説に改めて取り組んだ。

 主人公の二朗は佐渡から上京して美術予備校に入るが、美大に合格するには「絵心」とは別の「受験用の絵」が必要なことを知り愕然とする。自身も予備校生だった会田さんは美術界の入り口から問題が詰まっていると感じて、1986年を舞台に、二朗と初めての恋人、美術家、評論家などをめぐる物語を紡いでいった。

「僕が美術界で出会った人たちをブレンドして架空の人物を作りました。彼らを将棋の駒のように神の視点から動かしてストーリーを作るのは楽しかったですね」

 書き始めてから主要な5人の男性が自分の分身であることに気づいた。地方出身の純朴な二朗、俗っぽくて漫画好きの友人、テクニック抜群の同期生、国際的に活躍しそうなアーティスト。会田さんの美術制作の原動力にもなってきた、美術界の現状や制度への怒りをたぎらせる酒乱気味の人物もいる。

 執筆に使うのはタブレット端末と人さし指だ。小説は初めから順番に書いていく人が多いが、会田さんは書きやすい場面から手をつけ、虫食い穴のように残ったところを後から埋めていった。

「絵の描き方と似ていると言われました。絵はキャンバスの端から埋めていくというより、ポツンポツンと部分的に描いていって、全体的にピンぼけだった写真のピントがだんだん合ってくる感じで完成していく。絵と同じ方法で文章も書いたのかもしれません」


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