八嶋智人 (撮影/写真部・加藤夏子)
八嶋智人 (撮影/写真部・加藤夏子)
舞台「あなたの目」では野間口徹さんや小林聡美さんと共演。それも楽しい (撮影/写真部・加藤夏子)
舞台「あなたの目」では野間口徹さんや小林聡美さんと共演。それも楽しい (撮影/写真部・加藤夏子)

 2月末の公演中止から約半年。俳優の八嶋智人さんは、あらためて自分にとって舞台とは何かを問いかけた。

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 今年2月末、八嶋さんが出演していた舞台「泣くロミオと怒るジュリエット」が、東京での7公演を残して中止となった。

「そのときは、まだ新型コロナウイルスがこれほど感染拡大すると思わなかったので、大阪公演の稽古もしていたんです。でも結局、大阪では上演できなかった。演出家や俳優がいくら『劇場の火を消したくない』と思っても、劇場が開かなければどうしようもないことを思い知らされました」

 緊急事態宣言が発令されるまで、“舞台を上演するかしないか”という判断は、すべて主催者に委ねられていた。

「舞台人としては僕もかつてないピンチに直面しましたし、僕が所属している事務所は、舞台をこよなく愛する人たちの集団なので、芝居を上演できない状況は、俳優にとってもスタッフにとっても本当につらかったと思います。ただ、今になってみれば、コロナ禍にあったおかげで、それまで考えることのできなかったことをきちんと考える時間をもらえたのかもしれない、とも思うんです」

 世界中の人たちが立ち止まることを余儀なくされた瞬間、八嶋さんも、「人前で芝居をするって何なんだろうな。自分がやってきた劇団(カムカムミニキーナ)が今年で30年。その記念の公演の準備を進めてきたけど、そもそも劇団って何なんだろう?」と、あらためて自分の仕事に思いを巡らせた。

「僕、今年で50歳なんですけど、人格的には、中3ぐらいから全く成長してないんです(笑)。事務所に入ったのが27歳なので俳優としてのセルフプロデュース的にもどこか“永遠の27歳”みたいな立ち位置で(笑)。本来なら50歳って、社会の中枢にいるイメージじゃないですか。でも、僕にはそういう大人の部分が欠落していた。だから自粛期間中は、その“大人になるべき自分”と“子供のままでいることを許している自分”のギャップを埋めるために、思索していた感じです」

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