元山口組系暴力団「義竜会」の組長だった竹垣悟氏は井上組長の心境についてこう語る。

「私もヤクザを辞めてカタギになる時は迷いました。そら若い時からヤクザやってて、カタギは未知の世界やからね。それに、ヤクザの親分が引退後は結構、みじめなもんですわ。引退したとたん、子分だった若い衆からカネをせびられたり、殴られたり悲惨な末路をたどった親分を私は何人も見てきた。井上組長だってそれをわかっているはず。それにヤクザって商売は、計画性などありませんわ。明日にはまた明日の風が吹くと、その日暮らしのようなもんですから、井上組長も当面は頑張ると思います」

 そんな状況下で、神戸山口組から六代目山口組に戻ろうとする組員も少なくないという。

「六代目山口組は、上納金を免除してもいいから、戻ってこいと甘い蜜をちらつかせて、神戸山口組の組員を誘っています。六代目山口組の司忍組長以下、幹部連中は、勝負はついたとばかりに余裕ですよ」(捜査関係者)

 山之内氏、竹垣氏ともに、神戸山口組の先行きについては悲観的な見立てで一致している。

「落ちる一方で長くはないでしょうね。いつ崩壊してもおかしくない」

 そして竹垣氏は1984年に山口組から分裂して抗争になった一和会との「山一抗争」を例にこう話す。

「山一抗争でも、山口組からヒットマンを送り込まれて、その攻勢に耐え切れなかった。その上、一和会の組員はカネ儲けもできなくなり、激減。組長への求心力がなくなっていった。最後はダメ押しとばかりに、山口組が一和会の組長宅にロケット砲や自動小銃を撃ち込んで、崩壊ですわ。山一抗争の終焉とそっくりの展開に見えますな」

(本誌取材班)
※週刊朝日オンライン限定記事