事業用太陽光発電 (撮影/桐島瞬)
事業用太陽光発電 (撮影/桐島瞬)
9割の世帯が停電した鋸南町。太陽光のある家庭では停電中も電気を使えた (撮影/桐島瞬)
9割の世帯が停電した鋸南町。太陽光のある家庭では停電中も電気を使えた (撮影/桐島瞬)
台風15号で火災を起こした千葉・山倉水上メガソーラー発電所 (撮影/桐島瞬)
台風15号で火災を起こした千葉・山倉水上メガソーラー発電所 (撮影/桐島瞬)

 経済産業省が事業用太陽光発電などの固定価格買い取り制度(FIT)を見直し、事業者の自立を促す。また、台風15号による大規模停電で太陽光を活用した家庭もある一方で、火災を起こした発電所もあった。再生可能エネルギーの拡大に影を落とすことはないのか。ジャーナリスト・桐島瞬氏が報告する。

【写真】台風15号で火災を起こした千葉・山倉水上メガソーラー発電所

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 経産省は8月下旬、再エネを大手電力会社が定額で買い取るFITについて、事業用太陽光発電と風力発電を制度から外していく方針を打ち出した。

 この案が出されたのは、再エネの主力電源化に向けた議論を行う有識者会議の場。事業用太陽光発電と風力発電を「FITからの自立化が見込める電源」と位置づけ、発電事業者が入札制度を通じて電力市場で直接電気を販売することを求めたのだ。

 有識者会議を取りまとめる資源エネルギー庁新エネルギー課の担当者は、制度の見直し自体は決まっていたものだと説明する。

「再エネの利用促進を定めた『電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法』(FIT法)に、2021年3月末までに法律の抜本的な見直しをすることが書かれていて、それに沿ったものです」

 その上で、今回の狙いをこう話す。

「再エネを増やしつつも国民負担を減らすためにどうするか。その一つとして、発電コストが下がっている太陽光と風力に焦点を当てました。何らかの補助は引き続き必要だと考えていますが、ベースとして電力市場で競争力を持つことを促す制度を作ることを検討しています」

 ここで言う「国民負担」とは、再エネ賦課金のことだ。再エネで発電した電気を売電すると電力会社が決められた価格で買い取ってくれるが、その原資は電気料金に上乗せされている。それが再エネ賦課金だ。

 この賦課金は値上げを繰り返し、現在は1キロワット(kW)時当たり2.95円。平均的な家庭の電気代の約1割を占める。買い取り費用の総額は年々増加し、今年度の見込み額はおよそ3.6兆円。当初の想定では30年度に4兆円だったが、すでにそれに迫る勢いで膨れ上がっている。

 このままFITを運用すれば国民負担がさらにかさんでしまうことから、再エネを自立化する方策が議論されているのだ。

 事業用太陽光が見直しの対象になったのは、一部で乱立する太陽光発電を締め出すためとの見方もある。自然エネルギー財団事業局長の大林ミカ氏が解説する。

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