2019年7月にスイスのジュネーブであった世界貿易機関(WTO)の一般理事会では、日本の対韓輸出規制強化について、隣り合って座る日本と韓国の政府代表団がそれぞれ正当性を国際社会に訴えた(C)朝日新聞社
2019年7月にスイスのジュネーブであった世界貿易機関(WTO)の一般理事会では、日本の対韓輸出規制強化について、隣り合って座る日本と韓国の政府代表団がそれぞれ正当性を国際社会に訴えた(C)朝日新聞社

 ドロ沼化の様相をみせている日韓関係にまたひとつ、懸念材料が持ち上がった。

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 世界貿易機関(WTO)は9月16日、日本による対韓輸出規制強化は不当だとして韓国が提訴した、と発表した。

 日本は、7月に半導体やディスプレーの材料となる3品目について、韓国に向けた輸出の管理を強化した。さらに8月には、輸出手続きを簡略化できる「ホワイト国」(輸出優遇国)のリストから韓国を外す「第2弾」の措置を行っていた。

 日韓関係の悪化によって、韓国人による九州や北海道への観光客は激減。日本と韓国を結ぶ、格安航空会社(LCC)の路線も次々と運休が発表されている。観光庁の18日の発表によると、8月に日本を訪れた韓国人旅行者数は、前年同月と比較して半減した。わたしたちの暮らしにも影響が出ている。

 これから日韓両国は、WTOの手続きに沿って、30日以内に協議が始まる。それでも解決しない場合は、裁判にあたる紛争処理委員会に諮ることになる。

 だが、経済アナリストの森永卓郎氏は、

「緊張関係が長く続けば、日本にとって最悪のシナリオが待っています」

 と警鐘を鳴らす。

 日本の輸出規制によって韓国の半導体産業は混迷する、とさかんに言われているが、実は韓国への打撃は、さほど深刻ではない、という。

「台湾の半導体産業も日本からの素材に依拠していますが、日本からの輸出優遇措置は受けていません」(森永氏)

 つまり、韓国への措置は、台湾など他の諸外国と同じ通常の輸出手続きに戻しただけなのだ。

 日韓関係に詳しい大使経験者も、こう分析する。

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