──具体的には?

L:マッチョなタイプではなく女性的な面もあり、そんな彼が監督の黄金時代であるハリウッドの古風な境遇に溶け込もうと努力し、もがいている。でも自分の将来がどうなるかわからず不安に駆り立てられるんだ。変化し続けるハリウッド文化の中で自分は生き延びられるのだろうか、と感じている。それを描くクエンティンの手法がとても好きだな。彼はハリウッドのあの時代をシネマのルネサンス期と考えているのではないかな。アメリカという国の文化や意識が変革した時代でもあったからね。

B:僕も同感だよ。本当に感動を誘う映画だよ、特にラストが……。ネタはばらしたくないけれど、リック・ダルトンとシャロン・テートの関係は、古き良き時代のロス・オブ・イノセンス(無垢の時代の終わり)が象徴されていると思うな。それはアメリカという国のあの時代にも言えることだと思うけれど。美しいシーンだよ。もはや戻ってこないもの、失われてしまったもののような……。

──友情の物語でもあるわけですが、共演の感想は?

B:レオをとても尊敬しているよ。

L:……(笑)。

B:レオのこれまでの業績だけでも、映画史に残るべき素晴らしいものだと思う。彼の出演する作品の選択というのも素晴らしいな。出演作の選び方は、僕に似ているといえば似ているんだ。僕ら2人とも監督、脚本家を心から尊敬している。だから、この2点から出演作品を決めるんだ。その次にどんなメンツがキャストとして参加するかだな。本作の場合、その顔ぶれが素晴らしかったから、仕事も喜びに変わったんだ。

──映画の中でレオが演じるリックがそうしているように、あなたたちも自宅で鏡に向かって自分に話しかけたりしますか?(笑)

L:もちろん! 何度もやったことがあるよ。

B:それは自分では認めたくない事実だな(笑)。

L:リックは自分自身のモータリティー俳優としての死活問題を抱えているんだ。この映画産業に関わることに終止符が打たれるかもしれない、という問題を抱えている。自分の中に不安をかき立てる声が聞こえている。それは実に人間的な物語だよ。いろんな点で、人間誰もが抱える共通の課題だと思うんだ。俳優としてすんなりと共感できる課題だった。理解するための努力は必要なかった。

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