そう。現場は常に、平常心だから。そこで怒号が飛ぶわけでもなく、拳が振るわれるわけでもない。殴られて引きずられ性産業を強要される女はおらず、「かわいいね」「きれいだね」「稼げるよ」という甘い言葉が優しくとびかう場。30万の椅子が並ぶビジネスの現場。搾取じゃなく、経済行為。だいたい風俗なんて日本社会では風景化している日常で、そこに男たちは客として、またはビジネスとして関わるだけで、無痛。いやむしろ「女の子は稼げていいね」くらいの気軽さで関わる人がほとんどだろう。

 男女共に若者が巻き込まれ搾取され、搾取する性産業。大学や社会はどのような対策を練るべきなのか。私たちは真剣に、日本が公然と成長させてきた性産業に、しっかり向き合う必要があるのだと思う。

週刊朝日  2019年2月8日号

著者プロフィールを見る
北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

北原みのりの記事一覧はこちら