お店でお酒や料理を無料で味わい、社員と学生が懇談して会社の実像を伝える。チキン南蛮など自慢のメニューを体感してもらうこともできる。

 かつて会社説明会の参加者は数人だったが、0円酒場を始めてから毎回30~40人が参加する。うち約7割が選考の場に進む。採用担当の渡邉烈任さんは「内定者が昨年の3倍以上に増え、かなりの成果」という。今年は採用目標25人に対し、既に20人が内定している。

 なぜ、こうしたユニークな採用活動が広がるのか。

 リクルートグループ・就職みらい研究所の岡崎仁美所長は「新卒一括採用だけでは人材確保が難しく、他社にない方法やこれまでやらなかった方法をとる必要が出てきている」と話す。

 リクルートは、企業の採用予定や学生の就職意向をもとに、大卒求人倍率を調べている。18年3月卒は1.78倍。就職希望の学生数がここ数年ほぼ横ばいなのに対し、求人数は増える傾向だ。求人倍率が上がり、採用も多様化しているようだ。

 最近の学生は、自己PRや志望動機などの面接対策に余念がない。面接だと学生の本当の姿をつかめない。そんな思いから、人材サービス会社ビースタイル(東京都)は、面接を廃止した。

 代わりに、社員との面談やインターンなど、会社を知ってもらう場を数多く設ける。学生は平均7回会社を訪問。次の選考に進むかどうかは、企業側でなく学生側が判断する。最終的な採否はもちろん企業側が決めるが、「学生に選んでもらうことで、本当に働きたい人を採用できる」という。

 廃止を決めたきっかけの一つは、内定辞退率の高さだった。廃止前の15年度入社はほぼ半数が辞退した。廃止後の16年度入社は内定者7人に対し、辞退者ゼロ。17年度も23人に対し、1人にとどまる。

 記者が大学にいた約5年前、「就職先が決まらなければ、卒業するよりも留年を」との言葉をよく聞いた。当時は新卒でないと就職が難しいと言われたが、今は様変わりのようだ。

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