「遼寧省丹東は中国、北朝鮮、米国が諜報活動を繰り広げる有名な場所。一方の浙江省は日本を標的にした複数のミサイルがある軍事施設です。自分の位置を見失うほど何もない場所で、拘束者が素人だった、というのは少し不自然です」

 脱北者男性が日本の政府機関との関係をほのめかす供述をしたとの情報も出ている。邦人は無事解放されるのか。前出の大野氏はこう言い切る。

「スパイかどうかは、外には絶対に明らかにならず、善意による身柄釈放も期待できない。当面は中国側が外交カードとして使う可能性が高い」

 安倍政権は、日中関係で新たな難題を抱え込んだ。

(本誌・鳴澤 大、永野原梨香、牧野めぐみ、西岡千史、林 壮一、松岡かすみ、秦 正理/今西憲之)

週刊朝日 2015年10月16日号