教育評論家尾木直樹氏(c)朝日新聞社 @@写禁
<br />
教育評論家
尾木直樹氏
(c)朝日新聞社 @@写禁

 平田奈津美さん(13)と同級生の星野凌斗(りょうと)君(12)が遺体で発見された大阪・中1少年少女殺し事件。教育評論家の尾木直樹氏は、この事件を通してスマホ、LINEの危険性を訴える。

*  *  *

 この痛ましい事件は、“LINEは非常に危険なツール”だということを象徴的に表しています。被害にあった生徒たちが映る防犯カメラの映像を見ると、ずっとスマホをいじり、頻繁にLINEのやりとりをして24時間つながっているんです。夜中に街を歩いていたら危険を感じて怖いはずですが、気軽につながれるので、いつも仲間と一緒にいるような感覚に陥り、怖さを感じなくなっています。両親も子供にスマホを持たせれば安心だと思っていますが、いつでも連絡がとれると思って錯覚を起こすことが危険です。スマホでは子供の安全を守れないと、頭にたたきこんでおいてほしいですね。

 思春期の子供たちは、親や先生に反発して自立を始めようとしますが、精神的にも経済的にも未熟で寂しくなります。だから仲間を求めますが、この時に一人になって孤独になる時間も必要です。孤独になって、客観的に自己を見つめて葛藤をし、何かに打ち込んで自分の中のモヤモヤの感情を昇華。こういうプロセスを経て、大人になっていくのです。それが、24時間LINEでつながってしまうと、自分を客観視せず自立できなくなり、未熟な大人になってしまうのです。

 本当に安心できるのは、Face to Faceの関係。目は口ほどにモノを言うので、相手の目をじっと見て、それを読み取れる能力、相手の気持ちに共感できる能力が重要なんです。24時間LINEでつながっていたとしても、共感能力は身につかず、コミュニケーションもとれていません。日本社会全体が錯覚を起こしていることを、僕は危惧します。スマホを持つな、LINEをするなとは言いません。便利なものだからこそ、秩序や規則が必要なのです。米国で母が愛する息子を守るために作ったスマホの使用契約書「18の約束」が話題になりましたが、日本もお手本にすべきです。子供にもプライバシーはありますが、親がスマホを買って、使用料を払っているのだから、管理権も所有権も親のもの。わが子を守り、自立できない未熟な大人にしないためにも、親の自覚も必要なのです。(談)

週刊朝日 2015年9月4日号