太陽光発電設備 (c)朝日新聞社
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太陽光発電設備 (c)朝日新聞社

 9月24日、九州電力が固定価格買い取り制度(FIT)に基づく新規契約を中断すると突如、発表。それに続いて、北海道、東北、四国、沖縄の電力4社が再生可能エネルギーの新規接続申し込みの受け入れを停止し、事業者は青天の霹靂(へきれき)と悲鳴を上げている。

 ある大手発電事業者の関係者がこう語る。

「あまりに急な発表で、びっくりしました。今年1月くらいから九電は申請は受け付けるものの、ずっと『回答保留』のまま放ったらかしで、おかしいと疑ってはいたんです」

 30日には申し合わせたように北海道、東北、四国の3社も新規接続申し込みの回答保留を一斉に発表。突然の事態に、再エネ事業者の間には衝撃が走った。

 東北電が10月9日に福島市で開いた再エネ事業者向けの説明会には約130人が詰め掛け、会場からは批判の声が相次いだ。

 北海道と東北地域を担当する産業用太陽光発電施工業者がこう憤る。

「ただ保留と言われ、再開が何カ月先になるのかさえわからない。いまのままでは顧客に見積もりも出せません。こんな状態では、今後引き合いが減っていくのは間違いないでしょう」

 市民が出資して地域電力をまかなう「ご当地電力」として注目を浴びている会津電力では、事業計画自体が狂ってしまったという。

「まさに青天の霹靂です。第1期事業として会津の20カ所以上の合計2540キロワットの太陽光発電設備を造り終え、これから2期事業が始まるところでした。新たに20億円を投じて7千キロワットの発電設備を設ける計画も見直さざるを得ない。融資した銀行も困っています。20人ほど採用した従業員にしても、計画が順調に進むと見越して雇用したんです」(佐藤彌右衛門社長)

 東北電によると、管内の昼間の電力需要は少ない時期で970万キロワット。一方で、今年5月現在の太陽光設備認定量は1073万キロワット。風力と合わせた再エネの発電量が、電力需要を上回ってしまう。このため、50キロワット以上の再エネ設備の接続申し込みに対する回答を保留したという。

 発表に驚いているのは、業者だけではない。原発事故で甚大な被害を受けた福島県は、40年までに県内エネルギー需要の100%を再エネでまかなう計画を進めていたが、接続保留で暗雲が垂れ込めた。

 福島県エネルギー課の担当者が言う。

「東北電の保留措置は、九電の発表から1週間後というタイミング。将来的にはあるかと思っていましたが、今回は非常に急で、想定していませんでした。不安に思った事業者からの問い合わせも多くあります。そもそも東北電は電力系統ごとの情報公開をしていません。キャパシティーを超えると言われても、こちらで判断する材料すらないのです」

 危機感を抱いた県は10月8日、佐藤雄平知事名で小渕経産相(当時)と竹下亘復興相に緊急要望書を提出した。

<東北電力の系統接続保留は復興に水を差す深刻な事態であり、国の重要施策とも大きく矛盾する>

 と、国主導で広域運用の強化や送配電網の増強などを行うよう求めたのである。福島県や国では補助金を使った再エネ促進も行っているが、ここにも影響が出ているという。

「小水力発電へ補助をする制度は、事業の実現可能性がなければ申請があっても補助金の採択ができません。また、避難指示区域の再エネを支援する国の制度では、補助金採択が決まった人から、『導入の見通しが立たないということで保留になった』と連絡を受けました。東北電力は今後、50キロワット未満の低圧設備に関しても保留の可能性を示唆していますが、キチンとした説明と情報開示をしてほしい」(前出の担当者)

(本誌・小泉耕平、ジャーナリスト・桐島 瞬)

週刊朝日  2014年10月31日号より抜粋