作家の室井佑月氏は、日本の閣僚に起きているスキャンダルについて「知らなかった」では済まされないとこういう。

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 8月末、国連の人種差別撤廃委員会は日本のヘイトスピーチについて、「捜査を行い、必要な場合には起訴すべきだ」。そう勧告した。

(なぜ法で規制しない。早く捕まえて処罰しろ)とせっつかれたわけだ。

「ヘイトスピーチ対策を、その他の抗議活動などの『表現の自由』を規制する口実にすべきではない」とまでいわれた。

 日本はヘイトスピーチの法規制については、「表現の自由」を理由に態度を曖昧にしているからね。もう、そういうのやめれ、と叱られたわけ。

 まあ、人種差別を煽るヘイトスピーチと国会前のデモをごっちゃに考えている女大臣もいるしな。

 そうそう委員会は、ヘイトスピーチを行った公職者や政治家に対しての制裁についても言及したんだよ。いるじゃん、この国には。今、結構、強い人たち。

 山谷えり子拉致問題担当相が、9月25日、日本外国特派員協会で拉致問題について講演した。だが、質疑応答の時間になると、過激なヘイトスピーチで悪名高い「在特会」との関係ばかり。彼女、在特会の幹部との写真が週刊誌に出ちゃったもんな。

 あたしはその動画を観たんだが、外国人記者の口から「ザイトクカーイ」という単語が出てきてびっくりしたぞ。

 なのに、山谷大臣ときたら、ヘイトスピーチについては、「憂慮に堪えない」「遺憾に思う」というけれど、在特会について直接的な批判はしたくないようだった(あたしにはそう見えた)。外国人記者が「ザイトクカーイ」といってるのに、山谷さんはその名さえ極端に口にしようとせず(何回かはいった?)、不自然なのだ。

 写真についても、知らなかったの一点張り。独のフリー記者から、「大臣は警察組織のトップとしてこういう組織、(中略)それを知らなかったというのは問題ではないか」なんて突っ込まれてやんの。

 だよね、知らなかったってのも問題だし、知ったからって「もう写真撮らない」で済まされないはず。高市総務大臣と自民党政務調査会長の稲田議員も、ネオナチの思想を掲げる活動家との写真が出てきた。安倍首相まで在特会幹部とツーショット写真を撮っていた。

 みな「知らなかった」っていう。でもその逃げ方は、日本という国の中枢ちゅうの中枢にいる人が、甘い管理体制の中、じつは情報弱者なのだと、海外に知らしめてることになるんじゃないのか。

 まさかそんなはずあるわきゃないし、実際は利用できるところは利用していたんだろ、普通はそう推理するわな。あたしはそうだ。

 この件に関しては、内田樹さんのご意見がもっとも的確であるような……。

「いや、問題は『そういう人』から『一緒に写真に写りたい人』だと思われているという点にあるわけでしょ」

 ですよね。納得。

週刊朝日  2014年10月17日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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