長身ですらりとしたカップルが待ち合わせ場所にやってきた。芥川賞作家・平野啓一郎とモデル・春香の夫妻。なんだかカッコよくて、意味なくキンチョーしてしまう。が、その素顔は意外に……。

夫「出会いは2006年、ルイ・ヴィトンのパーティーです。僕は普段そういう場所にあまり行かないんですが、たまたまフラッと行ったら彼女が来ていた。知人の紹介で話をしたら、同い年で生まれた場所がすごく近いとか、どっちもAB型だとか、誕生日が2日違いだとか、いろいろ共通点があって初対面の割には話が弾んだんです」

妻「私は彼のデビュー作を買っていたので、『本のイメージとかけ離れているな』が第一印象です。とっつきにくい感じかと思っていましたが、いろんな接点を知って親近感が湧いてきた。私はそのとき雑誌に『デジカメ日誌』という連載を持っていて、そこに彼に登場してもらったんです」

夫「そうだ、その写真のやりとりで連絡を取るようになったんだ」

 メールでのやりとりが発展して、交際スタート。作家の書くメールって、さぞや美しい言葉がちりばめられているのでは?

夫「それ、よく言われるんですけどね、ふつうですよ、別に。そんな凝ったこと書いても、さむいでしょ?」

妻「そんなことが書いてあったら逆に引いてた(笑)。象徴的な言葉があったとかよりも、たわいもないことがスムーズにやりとりできたのがよかったのかな」

夫「あと、趣味が近かったんです。コンサート行ったり、映画見たり、本読んだり、どっちもインドア派で」

妻「昔から文科系なんです」

夫「作家とモデルってすごく違う世界に住んでいそうですが、彼女は雑誌のモデルなので、基本的に仕事をしている業界は同じなんです。出版業界に共通の知り合いも多いし、お互いよく知っている世界にいた」

妻「一緒にいて気張らず、リラックスできたことが結婚の決め手でしょうか。あと彼が家族を大切にしているというのも大きなポイントでした。私は実家で母と父と祖母と一緒の大きな家族のなかで育ってきたので実家との連絡もまめだし、帰省もよくする。彼はそういうことを理解してくれる人だったから」

 08年に結婚。プロポーズも「ごく普通にサラッと」だったそう。

夫「僕はもともとサプライズ的なことはしないタイプ。それに彼女もあんまりそういうロマンチックな仕掛けを求めないので」

妻「私はすごく現実的なタイプみたいです」

夫「プレゼントをするにも、モデルだから彼女のほうがいろいろ詳しいんですよ。何がいくらくらいだとか、いま発売されているバッグは何だとか、みんな知っている。だから本人に希望を聞くのが一番いいんです。結婚指輪も、話し合って一緒に買いに行きました。お互いにそういうことに関しては割とサッパリしてるのでラクなんです」

週刊朝日  2014年8月8日号より抜粋