7月8日、フランスで書籍の無料配送を禁止する法律が施行された。Amazonを狙い撃ちしたもののようだが、ライブドア元社長の堀江貴文氏はこの一件に関して、このように持論を展開する。

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 フランスで反Amazon法が成立した。Amazonが送料無料でEC(電子商取引)をやることができなくなったのだ。これは街の小売書店を守るための法律である。恐らく書店の組合がロビー活動をしまくったのだろう。

 とはいえAmazonは送料を1セントなど激安にして対抗してくるとは思うので、実質的には有名無実化するだろう。

 だが、こうやって書店を保護すると、イノベーションが止まって、古い業態を古いまま運営することになる。工夫をしなくなると、ますますオンライン書店との差別化が困難になる。気づいた頃には全く競争力をなくしてしまうだろう。

 私がオーナーを務める会社の子会社でShibuya Publishing&Booksellers(略称SPBS)という会社があるのだが、渋谷の神山商店会でお洒落書店を運営している。編集と販売を同じ場所でやろうというコンセプトで始まった本屋だ。

 数年前から編集者のシェアオフィスを本に囲まれた場所で運用している。もちろん本の販売だけでは十分な利益を上げることはできない。返本できる代わりに利益率が低いからだ。だからSPBSでは、いろいろな方法で収益を上げることを目標にしている。

 
 まずはシェアオフィスのレンタル料金、そしてオープン前の時間帯を利用しての、ファッション雑誌などの撮影も重要な収益源である。お洒落で本に囲まれた文化的な空間というのはなかなかないので、重宝してもらっているようだ。

 また本だけでなく、本に関連する雑貨が場所の半分以上を占めている。これはヴィレッジヴァンガードなどで有名な手法である。さらに小物やアクセサリーなどを販売したい人用にレンタルボックスも用意している。定期的に開催されるセミナーも重要な収益源だ。さらにワークショップなども開催している。

 同じようなコンセプトで下北沢にできたB&Bという本屋も黒字化しているようだ。こうやって努力に努力を重ねて創意工夫を進めることで、法律で保護してもらわなくても商売として本屋を運営していくことは十分可能になる。

 フランスの反Amazon法のような法律が成立してしまうと、そういう創意工夫をやろうと思う人が少なくなってしまうのではないか。もちろんUber(タクシー・ハイヤーのオンデマンド配車サービス)の車を襲撃してしまうタクシー運転手がいるような国だから、こういう法律が成立してしまうのだろう。

 つまりフランスの小売店は、オーナー経営が普通で、できれば楽をしてあまりイノベーションをせずに現状維持の商売ができればいいやという人がそれなりに多いということなのだろう。こうした動きが世界的に広まるとは思えないが、オンラインECがこれからもっと伸びていくこと、便利になっていくことを前提で書店ビジネスを考えていくべきであろう。

 日本でも個人経営の書店がどんどん閉店に追い込まれているが、もっとアイデアを絞って努力をしていってほしいと考える。

週刊朝日  2014年7月25日号