衝撃の事実が、10月31日に発表された東電の決算(4~9月期)で明らかになった。膨大な費用がかかる事故処理で赤字決算かと思いきや、なんと3年ぶりの黒字となったのだ。前年の同じ時期は1662億円の大幅な経常赤字だっただけに、急回復ぶりが目立つ。発表資料によると、コスト削減を行ったというが、その内容が驚きだ。

 人件費の削減(183億円)に加え、修繕工事の費用(367億円)を削っているのだ。中でも、原子力発電所の修繕費をいちばん大きく削っており、78億円も減少させた。

 さらに国民に電気料金の値上げを押し付けた結果、売り上げは大幅に増えたが、数字を見る限り、稼いだカネを事故処理に投入せずに、利益を確保している。

「現場はどう考えても赤字。適正なコストカットならいいが、やりすぎてかえって危険なのが現状です」(福島第一原発作業員)

 これでは、事故処理は遅々として進むはずがない。東京商工リサーチの友田信男情報本部長が解説する。

「決算をよく見せるために、原発修繕の費用を先送りしている。これはコスト削減とはいえない。やるべき原発の補修が進んでいないとすれば、本末転倒です」

 東電は、どうして黒字にこだわったのか。

「借金がある以上、見た目をよくしなければ、融資を継続してもらえなくなるからです」(前出の友田氏)

 3期連続の赤字となれば、融資を見合わせる金融機関が出てきてもおかしくはない。12月にはメガバンクを中心に2千億円の融資継続と、社債の償還分3千億円の新規融資を控えている。つまり、事故処理より、東電は会社の存続を優先させたのだ。

週刊朝日 2013年11月22日号