約1年9カ月の服役を経て“シャバ”に戻ってきた元ライブドア社長の堀江貴文氏。インターネットでも生放送が当たり前になりつつある今、堀江氏は地上波テレビ局の“磁場”の崩壊が始まっていると指摘する。

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 仮釈放中ということもあって、特に地上波テレビ局への出演機会が少ない。まあ、色々と変なことを言うかもしれないということで敬遠されているだけかもしれないけど……。

 テレビ各局は、本業の映像コンテンツ製作・配信よりも不動産事業などで収益を上げているような状況で、インターネットのソーシャルネットワークの発達によるソーシャルゲームや居酒屋での出会いなどに時間を取られて、テレビの視聴時間は減る一方だ。

 ただ、腐っても鯛というか、テレビ局、特に地上波テレビ局独特の磁場というものがあるのは事実だ。テレビ局に行くと、時代の先端を走っている人に会えるし、やはりテレビ局の知名度は侮れないものがあって、オファーがあると、目立ちたくない人は別として出演を快諾してくれるようだ。

 先端を走って注目されている人は話も面白いし、会話のキャッチボールをしていると、ワクワクすることも多い。そんな人達がたくさん集まっているというのが、テレビ局が持っているパワーにつながっているのではないかと思うのだ。

 確かにインターネット上のソーシャルメディアには面白い人達がヴァーチャルに集まっている。けれど、フェイスツーフェイスのコミュニケーションは、人と人を仲良くさせて面白い化学変化を起こすのには最適だ。やっぱり会って話したほうが早いのは間違いない。そんな場所が、もし定常的にどこかにできてくると更にインターネットシフトが進むのではないかと思う。

 そうするとテレビ局が持つ力がそがれていくだろう。これまでテレビ局に集まっていた人達がネットに流れてくるからだ。インターネットならではのオンデマンド性や時間の枠を気にしないでマルチチャネル化できる特性は、テレビには真似できないものだ。

 例えば今回の参議院選挙で、私はニコニコ動画の選挙生特番に出演したが、延べ視聴者数は20万人以上だったものの、そこからオンラインニュースサイトやツイッターのようなソーシャルネットワーキングサイトを通じて発言内容が拡散されるし、もっと多くの人達に内容自体はリーチしていると思われる。

 そんな生放送には自民党で大勝した首相を始めとする各党の代表クラスがこぞって中継で出演してくれている。普通の地上波テレビ局と遜色ない、いや率直なコメントやユーザとのコミュニケーションも取れている双方向性を加えると、テレビ局を超える放送内容だったと思う。

 スマートフォン時代になってインターネットでの生放送が当たり前になりつつある今、テレビからインターネットへと動画すらもシフトが始まっていて、テレビ局磁場の崩壊の序曲が始まっているような印象を受けている。

 はたしてテレビ局は、そんな磁場の崩壊に対して適切な対策を打つことができるのだろうか? インターネットの活用を本気で考えるべきだし、映像コンテンツの製作の体制や予算の掛け方を抜本的に見直す必要があるんじゃないかと私は考えている。

週刊朝日  2013年8月9日号