廃炉の“土俵際”に追い詰められた福井・敦賀原発2号機をめぐり、原発を運営する日本原子力発電(日本原電)がなりふり構わぬ反撃に転じている。

 5月22日、地質学の専門家らで作る有識者会合が「原発の直下に活断層がある」と断定した報告書を、原子力規制委員会が了承。2号機の廃炉は避けられない情勢になりつつある。 これに、日本原電は激しく抵抗した。有識者会合の見解を「断じて受け入れることはできない」として、規制委に公開質問状を送付。さらに、独自調査を委託した日米英やニュージーランドなどの専門家12人で作る「外部レビューグループ」まで登場させた。

 21日、グループのウッディ・エプシュタイン氏らが会見し、さらなる調査の必要性を主張。発表された「中間レビュー」では、
《これまでに日本原電が行ってきた(調査の)方法は適切である》
《日本原電及び有識者会合双方の報告書は、(中略)中立的な専門家によって評価されるべきである》
 などと、有識者会合が中立でないと言わんばかりの主張を展開した。

 突然現れたこの「専門家」たちは、何者なのか。

 原電側の資料によれば、調査を主導するエプシュタイン氏はノルウェーのリスクマネジメント会社「スキャンドパワー」社に所属。同社ホームページでは「原子力コンサルタント・マネジャー」と紹介されている。「スキャンドパワー」社は1970年代から各国の原子力産業にかかわり、最近も韓国や中国の原発関連企業と新たに契約している。つまり、どう見ても「原子力村の人」なのである。

 英シェフィールド大教授だというニール・チャップマン氏も原子力業界と関係が深いようだ。原子力発電環境整備機構(NUMO)の2011年の資料では、《放射性廃棄物処分の分野で30年以上にわたって国際的なコンサルタントとして活動してきた》と紹介されている。

 さらに気になるのは、米PG&E社出身という、ロイド・クラッフ氏の経歴。この会社、なんとカリフォルニア州で原発を運営するガス・電力会社なのである。

 グループのコーディネーターだというピーター・リックウッド氏といえば、09年まで国際原子力機関(IAEA)の広報担当官を務めた人物。グループにもIAEAの経歴を持つメンバーが2人含まれる。作家の広瀬隆氏がこう指摘する。

「IAEAは国連を利用した原子力推進のために設立され、チェルノブイリ原発事故の被害はきわめて限られている、という結論を導いた悪名高い組織です」

 要は、日本原電の「外部レビューグループ」は、原子力業界と“ズブズブ”の関係なのだ。東洋大の渡辺満久教授(変動地形学)はこう語る。

「日本原電は藁(わら)にもすがる思いなのでしょうが、中立性が確保されているとは思えない苦しい人選、という印象です。『疑わしきは止める』という規制委の新方針を理解していないのでは」

 一方、日本原電の広報室はこう反論する。「専門家の人選は弊社が外部評価をお願いしているスキャンドパワー社と大林組が行ったもの。中立性は確保されていると考えます」。

「専門家」たちの本音を、よく見極めるべきだろう。

週刊朝日 2013年6月7日号