東日本大震災、福島第一原発事故から約2年。現在も除染作業のため、多くの人が働いているが過酷な労働環境は以前と変わらないという。作家の室井佑月氏は、そんな状況に怒りをあらわにする。

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 東日本大震災が起きてから、政治家がずっといってきた言葉は、「被災地の復興が第一」というようなものだった。党を超え、去年の衆院選では、みんなが口々にそういっていた。その中で、本気だった人は何人くらいいたのだろうか。

 4月5日の毎日新聞朝刊に、福島第一原発事故に伴い、福島県で進む国直轄除染の作業員が、未だに過酷な労働環境に置かれている、という記事が載っていた。国直轄除染は国から、日当とは別に危険手当1万円が支払われることになっている。

 だけど、現場にいる作業員は1日1万1千円しかもらっていないとか。

 ということは、会社側が作業員に支払っているのは、日当1千円ということになる。ほんでもって、おかずが野菜を茹でただけの夕食だったり、1人当たり2畳で寝起きしなければならなかったり……。なんでも朝食は100円、夕食は200円で作られていたみたいだ。

 インタビューに答えた男性は、原発から20キロ圏内の急斜面で草刈りを任されていた。

 男性はいっている。「人間として扱われなかった」

 そう思って、当たり前だよな。危険な場所で仕事して、日当1千円。肉体労働なのに、茹でた野菜だけの夕食。どこの国の話ですか?って感じだ。

(未だにこんな状況なんだ)あたしはびっくりした。

 だって、この問題は少なくとも去年の衆院選の前に新聞に出ていた。何度も出ていた。

 大手ゼネコンに仕事を依頼し、大手ゼネコンが下請け会社に仕事をまわし、下請け会社がそのまた下の孫請け会社に仕事をまわし、そして孫請け会社がそのまた下の曾孫請け会社に仕事をまわし……。仕事が下におりてゆくたび、金の中抜きがされているという問題だ。

 被災地の復興が第一というのなら、危険なところで働く人々に、きちんと金が渡るようにしないと駄目じゃん。泊まりがけで働くわけだから、その環境も良くしなくては。

 金がすべてといっているわけではない。稼ぎたいという人だけではなく、この国のためになにかできることを、そう思って危険な作業を受け入れている人だっているに違いない。

 そういう人たちにあたしたちができることは、どうか彼らの待遇を良くしてあげてください、と願うことだけ。あたしたちの税金が大手ゼネコンだけを儲けさせているということに腹が立つ。

 新聞には大手ゼネコンの名前は載っていなかったが、もうそろそろ名前を出していいんじゃない? 下請け業者の名前だって。彼らがやっていることは、税金の不正使用だとあたしは思う。

 復興第一といっていた議員も、こういうところに圧力をかけるべきじゃない? 力の使い方がおかしいけど。

週刊朝日 2013年4月26日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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