欧州通貨ユーロの価値が再び猛烈な勢いで落ち込んでいる。3月末に1ユーロ=110円を超える水準まで上がっていたのに、6月1日には一時95円台半ばまで急落。実に約11年半ぶりの円高ユーロ安となった。いったい何が起きているのか。

「財政不安がギリシャからスペインに飛び火したのです。問題となっているのが大手銀行のバンキア。不動産バブルの崩壊で不良債権を抱え経営難に陥っており、もはやスペイン一国では救済できないほど損失が拡大しています」(いちよしアセットマネジメントの秋野充成運用部長)

 スペインの経済規模はユーロ圏4位と、ギリシャとはけた違いに大きい。その大国スペイン経済の行方を左右するのがバンキアだというわけだ。銀行の経営が傾けば「貸し渋り」「貸しはがし」が始まりやすくなる。そうなれば、景気も一気に悪くなる。

「バンキアが万一、経営破綻すると、投資家からは欧州各国で第2、第3のバンキア探しが起き、ユーロはさらに売り込まれて安くなるでしょう。1ユーロ=90円、80円の大台を突破しないという保証はありません」(別の運用会社幹部)

 ユーロだけではない。国の信用がなくなれば、欧州各国が発行する国債も値下がりする。欧州の国債は世界中の金融機関で保有されているため、世界的な金融不安が起きかねないのだという。リーマン・ショックならぬバンキア・ショックである。

※週刊朝日 2012年6月15日号