衆院特別委員会での審議が5月17日に始まり、いよいよ消費増税を巡る論議が本格化した。

 しかし、ちょっと待ってほしい。「国益のため」と言いながら議論する国会議員のセンセイ方は、本当にその資格があるのか。

 元参院議員の平野貞夫氏(76)が、25年前に政治家らとの日々のやり取りを記録したノートから衝撃の事実が明らかになった。

 このA4判のぶ厚いノートは、衆院事務局の職員だった平野氏が、委員部総務課長、委員部副部長時代に記した10冊の日記のうちの一冊である。"メモ魔"で知られる平野氏だけに、その内容は詳細だ。

 平野氏が指摘するのは、1987年6月に自らが同行した、衆議院の議院運営委員会(以下、議運)メンバーによる海外視察だった。

 当時の政治状況をいえば、第3次中曽根康弘内閣が大型間接税の「売上税」導入を目指したものの、野党の猛反対で同年4月に廃案。あとを継いだ竹下登内閣が翌88年11月、売上税に代わる消費税法案の衆院成立にこぎつけた。

 件(くだん)の海外視察があったのは、「売上税」導入が失敗した直後のこと。衆院議長のあっせんにより、与野党で「税制改革協議会」をつくることで合意し、消費税導入に向けた地ならしが始まるころだった。

 視察メンバーは、議運委員長の越智伊平氏(自民・故人)を団長に、与党が自民党の谷垣禎一氏(67)、高村正彦氏(70)、自見庄三郎氏(66)、田名部匡省氏(77)の計5人。野党は民社党の中野寛成氏(71)、社会党の清水勇氏(故人)、阿部未喜男氏(故人)、公明党の近江巳記夫氏(76)の4人。そして、全員が妻を同伴した。

 言うまでもなく、いまや谷垣氏は自民党総裁、そして高村氏は自身の派閥を率いる重鎮。自見氏は現職の金融相。さらに現在、民主党の中野氏は消費増税を審議する冒頭の衆院特別委の委員長という豪華メンバーだ。平野氏が語る。

「もちろん『調査議員団』というのは表向きの話。実情は、帰国直後から始まる臨時国会に向けて、消費税導入の与野党協議が円滑に進むよう地ならしをすることでした。つまり野党対策です。売上税を廃案にされた中曽根首相、竹下幹事長としては、協議会を円滑に推し進めて確実に結果を出さねばならなかった。そして、そのために『官房機密費』が使われたのです」

※週刊朝日 2012年6月1日号