渡辺佑基が選ぶ「生き物を愉しむ本」ベスト5

番外編

2014/08/08 19:45

 研究者が一般向けに本を書くという慣習は、欧米にはないらしい。わが国では最新の研究成果を聞いて理解したいという、分厚い読者層からの熱い需要があるから、科学本という独自のジャンルが進化した。
 さて、科学本でもせっかく読むのなら、当該分野の世界的トップランナーが著したものがいい。しかもできるだけわかりやすく、するすると読めるものがいい。もっといえばクスリと笑えて、同時に勉強にもなっちゃうものがいい。そんな贅沢な要望に応えてくれる本を、生物学者の立場から2冊(プラス1冊)紹介させてもらおう。
『波紋と螺旋とフィボナッチ』。シマウマの縞やメロンのひび割れ模様など、一見複雑怪奇な生物体のデザインが、じつはごく簡単なメカニズムによって形成されていることを解明していく。著者の近藤滋さんは、世界が認めるこの分野の第一人者。それなのにというか、だからこそというべきか、文章は軽くてノリノリである。珠玉のギャグがすべっている場面もお見受けするが、それもご愛嬌。自説を証明したいがために、80万円自腹を切り、上司に隠れて自宅でコソコソ実験をしていたという若き日のエピソードは最高。
『シロアリ』。女王の下におびただしいワーカーが隷属する社会性昆虫シロアリの話。著者、松浦健二さんの最大の発見は、シロアリの巣に寄生する「ターマイトボール」だ。シロアリのワーカーたちは、女王様のかわいい卵たちを「よしよし」となでているつもりでいて、それはじつは女王様の卵でないどころか昆虫ですらない、謎のエイリアン菌類なのである。恐ろしや。
 近藤、松浦両先生と比べるのもお恥ずかしい限りだが、地球を46日間で一周するアホウドリなど、動物たちのダイナミックな動きを解説する拙著『ペンギンが教えてくれた物理のはなし』も悪くないですよと、小声で足しておきます。

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