27年間TBSアナウンサーとして活躍し、この春フリーになった堀井美香さん。働きながら2人の子どもを育て、私立小学校受験も経験した。『AERA English特別号「英語に強くなる小学校選び2023』(2022年7月29日発売)では、現在は成人した子どもたちへの教育や受験対策などを振り返ってもらった。

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 母親が働いていると私立小学校は無理かも──そう考える人もいるかもしれない。20年ほど前の堀井美香さんもその一人だった。

「ですが、会社の先輩に『私立小に入れたほうがラクなこともあるよ』とアドバイスをいただいたんです。学習指導が丁寧だから家でのフォローも少なくてすむし、親が学校に行く機会も少ないよ、って。もちろん学校によって違うとは思いますが、だったら私にもできるかな、と考えたんです」

 にもかかわらず、上の子(長女)は地元の公立小学校に入学させた。理由を聞くと「あまりにきちんとした子だったから」と意外な答えが。

「保育園のころから持ち物を自分でそろえる子で、忘れ物が一つでもあると泣いてしまうんです。もっと子どもらしくていい、わちゃわちゃしていいんだって、多様な人間関係の中で学んでほしかった」

 一方、3歳下の長男は正反対のタイプだった。

「忘れ物なんて気にしない、“どうでもいいじゃん精神”で生きている子。私立小の細やかな指導を受けて軌道修正してもらおうと考えました」

 情報を集めると、自宅から歩いて通える場所に、少人数教育の私立小があった。学校の雰囲気も教育方針も好きになり、幼児教室に通って小学校受験をスタートさせた。

「最初はこの学校一本でいいと思っていたんですが、幼児教室に通い始めると欲が出ちゃうんですね。『この学校は記念受験だ』と思っても、受験するからには合格させてあげたい。そうすると授業のコマ数がどんどん増えるんです」

 幼児教室でママたちと情報交換すると、あせりも生まれる。カリスマ体操教室の特別授業を受講したり、2万円の積み木を購入したり……。

「まさか自分がここまでのめりこむとは思いませんでした。親が勝手に設定したゴールに向けて、子どもを引っ張りまわしていた感じです」

 長男が第1志望の私立小に無事合格した数年後、堀井さんの妹も長男と同じ小学校に子どもを入学させた。姉を反面教師にしたのか、幼児教室には通わせず、夏期講習と問題集だけで合格したそうだ。

「私が受験に注いだエネルギーと、幼児教室に支払ったお金はなんだったんでしょうね(笑)」

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AERA dot.編集部
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