高校卒業後に海外の大学に進学するのは、ほんの一握りだ。しかもその大半は東京の私立高校出身者といわれる。そんななか今春、茨城県の公立高校から名門・ハーバード大学の合格者が出た。茨城で生まれ育ち、身近に留学経験者もいないため、進学のための情報収集は自分でやるしかなかった――。2002年生まれ、18歳。夏にアメリカへ飛び立つ松野知紀さんを取材した。

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「将来は、政策が形成される仕組みを変えたいと思っています。いまの仕組みはマジョリティーの状況が考慮されやすい。統計的に数が多い意見が反映されるからです。これが果たして正しいのかどうかを研究したいんです」

 松野さんはこう話す。ハーバード大に入学予定の青年だ。2021年世界大学ランキング3位(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション)。イエール大、コロンビア大などと並び「アイビーリーグ」と称される、言わずと知れたアメリカの超有名私立大学だ。松野さんはハーバード大のほか、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)、ペンシルベニア大などにも合格したという。

 幼少期に海外経験があったわけではなく、海外大進学をめざす仲間に囲まれて触発されたというわけでもない。なにが松野さんの気持ちを駆り立てたのか。

 茨城県立の中高一貫校・日立第一高等学校出身。小学生時代は週1回、英会話スクールに通っていたが、「ほとんど身になっていない」と感じていた。しかし中学1年のとき、ALT(外国語指導助手)の教員との対話を通じて英会話の楽しさに目覚め、自分の意思でオンライン英会話を始めた。30分弱のレッスン、講師のフィードバック、復習、学校の授業の予習も含めて、毎日2時間を英語学習に充てた。オンラインで毎日少しずつ続けたほうが効果は高いと思ってのことだった。

「でも当時は英語を学んで何かをしたかったわけではないんです。そのころはまだ、いろいろな人と話せると楽しいな、ぐらいの気持ちでした」

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白石圭
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