ほぼ独力でハーバード大学の切符を手に入れた松野さん。日本の高校生に、訴えたいことがあるという。
「能力と意欲はあるのに、事情があって留学をあきらめてしまう人が、海外をめざせるような支援が必要だと思っています。たとえば課外活動をするにも、東京や海外に行くためにはお金がかかります。SATの準備にしても、対策本は国内の受験参考書以上に高額。入学後の学費も懸案です。私の場合、幸いにも柳井正財団から給付型奨学金を得られ、年間900万円の学費などを4年間、奨学金でまかなえることになりましたが、費用の面で親が承諾できないというケースは多いと思います」
松野さんはそんな思いから、海外大の進学支援団体「atelier basi」に今年からメンターとしてかかわる。「全国各地の熱意のある学生が環境に負けない進学が出来るよう、海外大学への学部進学を無償でサポートする」ことをミッションに、クラウドファンディングで資金を集めて発足した団体だ。
「そしてお金と同じぐらい重大なのが、環境です。とくに地方の学生だと、東京との情報の格差があるだけでなく、受験のレベル感がわからない。周りに海外大の経験者がいないからです。たとえ能力があっても、“自分もやればできるのではないか”というマインドセットがなければ、一歩を踏み出すのは困難だと思います」
今後は経験者の立場から、学生のコミュニティーづくり、SATの対策支援などを通じて、未来の留学生を後押ししていくという。
ハーバード大の授業は9月に始まる。8月には渡米する予定だ。
「それまでは英語の文学作品に触れたいですね。これまで読んできた英文といえば、政治関連の論文などが中心で、物語にはあまり親しんでいませんでした。文学的な教養は基礎として必要なもののひとつだと理解しています」
地方発、海外へ。新たな風が吹きつつある。
(文/白石圭)