6歳の息子を持つ30代の父親。「テレビなし育児」を貫く妻の教育方針に対し、「小学校に上がってから友達との話が合わなくなるのでは」と心配しています。「論語パパ」こと中国文献学者の山口謠司先生が、「論語」から格言を選んで現代の親の悩みに答える本連載。今回の父親へのアドバイスはいかに。

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【相談者:6歳の息子を持つ30代の父親】

 6歳の幼稚園年長の息子を持つ30代の父親です。妻の教育方針から我が家ではテレビを捨て、テレビなしで育てています。代わりに、本を読んだり、工作をしたり、体をつかった能動的な遊びが好きになり、本人に今のところ不満はなさそうです。しかし4月から小学校に通うようになったら、友達と話が合わず、おいてきぼりになってしまわないか、と心配です。周りとうまく調和できず「空気を読めない子」と思われてしまうかもしれません。

「友達との共通の話題は後になって取り戻せないもの。この先ずっとなしというのは、よくないのでは」と妻に伝えたところ、「テレビの話題がないと友達関係を築けないほうがおかしい」と取り合ってくれません。厳しすぎる妻を説得する方法はありませんか。

※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

【論語パパが選んだ言葉は?】

・「君子は和して同ぜず、小人(しょうじん)は同じて和せず」(子路第十三)

・「人の己(おの)れを知らざるを患(うれ)えず、人を知らざるを患(うりょ)うるなり」(学而第一)

【現代語訳】

・「立派な人は、主体性を持ちつつ他人と調和し、やみくもに他人の意見に同調することがない。つまらない人はその逆で、たやすく同調するが心から親しくなることがない」

・「人が自分のことをわかってくれないことを悩むのではない。自分が、人のことをわかってあげられていないことを悩むことこそが大切なのだ」

【解説】

 お答えします。子育てにテレビは必要ありません。

 私も生まれてこの方、現在に至るまで、テレビのない生活をしています。新聞もありません。父も母も「本当に必要な情報は、こちらから求めなくても自然に入ってくる」という考え方でした。私も長年の経験で同じように思います。

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山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/文献学者・中国学者。大東文化大学教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞。『ステップアップ0歳音読』(さくら舎)『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など著書多数。母親向けの論語講座も開催。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族

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