テレビや新聞から得られる情報は、本当のことなのかどうなのかよくわからない、文字通り「新しい話題」という意味での「ニュース」です。いちいち反応していたら、ゆっくり物事を考えたりする時間も、精神的ゆとりもなくなってしまいます。また、自分で処理しきれないほどの情報が満ちている今は、テレビがなくても、パソコンがあってインターネットにつながっていれば必要なことは自分で調べることもできますよね。

 相談者さんの息子さんがテレビを見なくても「不満」を感じていないようなら、ぜひ、このままテレビなしの生活を続けてみてください。少なくとも小学校、中学校を卒業するくらいまでの最も多感な頃には、テレビより「本を読んだり、工作をしたり、体をつかった能動的な遊び」で、感受性や心の深さを育むべきだと思います。

 2500年前の思想家・孔子の有名な言葉に、次のようなものがあります。

「君子は和して同ぜず、小人(しょうじん)は同じて和せず」(子路第十三)

「立派な人は、主体性を持ちつつ他人と調和し、やみくもに他人の意見に同調することがない。つまらない人はその逆で、たやすく同調するが心から親しくなることがない」という意味です。

 相談者さん、テレビの話題で付和雷同するくらいの人間関係ならいつでも、誰にでも作ることができます。息子さんがテレビのない生活をしているからといって「空気を読めない子」になってしまうのでは、などと決して心配しないでください。表面的なその場限りのニュースで感情を揺さぶられたりしていては、孔子が言うような「小人」になりかねないからです。相談者さんも、「その時だけ人に同調して、本心からは調和することができない人」とは、一緒に仕事することも難しいでしょう?

 もっとゆとりを持った深い心で物事を見つめ、構造的な思考ができる「君子」になれば、表面的なつきあいしかできない友達より、もっと深い考えを持つ人たちと、真の意味でのおつきあいができると思います。そのためにも、相談者さんは息子さんに豊かな感受性と「本当の優しさとは何か」ということを教えてあげることです。

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