ロックンロールバンド・横浜銀蝿のコンサートを見に行ったときにスカウトされて芸能界に入ったのが17歳。「銀蝿一家」としてデビューし、1982年4月に発売された2枚目のシングル「男の勲章」が大ヒットして人生が一変した。リーゼントにサングラス、リーゼント、ライダーの革ジャンや、白いドカンというファッションの「ツッパリスタイル」が当時10代の若者を中心に絶大な人気を誇り、カリスマ的な存在になった。

「男の勲章」は世代を超えて現在も歌い継がれている。2002年にフジテレビ系のバラエティー番組「めちゃ×2イケてるッ!」の人気企画「単位上等!爆走数取団」で罰ゲームの音楽に使用され、人気が再燃。女優・松嶋菜々子さん出演の「生茶」のCMでも使用され、2018年には日本テレビ系の人気ドラマ「今日から俺は!!」の主題歌で出演者たちが熱唱した。

「人のことは恩人というけど、あの歌は『恩曲』ですね。ウォーキングで近所の小学校の前を歩いていて、小学2、3年生ぐらいの子どもたちが『ちゅっぱることが男の~』って歌っているのを聞くと、すごい曲なんだなって(笑)。当時は『絶対売れる』と思っていましたが、40年経った今でも注目してもらえるなんて、夢にも思わなかった」

 10代で「時の人」となったが、その後の歩みは決して順風満帆ではなかった。「男の勲章」で大ヒットした後に横浜銀蝿が解散し、地方のイベントで呼ばれた際、スーパーの前でミカン箱に立って歌ったことがある。「これが現実なんだ」とかみしめたという。

 役者に挑戦して地位を築いた後も、芸能界引退、復帰と紆余曲折を経て今がある。

「傷ついたこと、うちのめされたこともありました。自分なりに必死に突っ走ってきたけど、家族や周りに助けられていると気づいたのは、お恥ずかしながら、48、49歳の時です。生活するためにお金はもちろん必要ですけど、たくさんの金を稼ぐよりも大事なことに気づかされて。仲間とディスカッションをして、家族とおいしいご飯を食べる。そういうことに幸せを感じるようになって……」。しみじみと語った後に「きれいごとばっかり言っているけど、六本木や銀座の姉ちゃんも好きだから。彼女たちと話すと世の中の流れが分かるんですよ。夜のパトロールです! 書いていいですよ」と照れ隠しで笑っていた。

 長女で女優の圭叶さんも父の背中を追いかけるように、芸能界で活動している。「びっくりしましたよ。本人には言わないですけど、すごくうれしかった」と語る一方、「芸能界は厳しい世界だと常に言っています。勝てば官軍、売れれば官軍の世界だけど、輝いている人たちは下積みの時期を経ている。一人では生きていけない世界だし、酸いも甘いも知っているつもりです。特別なアドバイスはしていません。聞かれたらするけど、自分の中で模索して体感したい部分があるんでしょう。僕も好き勝手やってきたので、やる気のあるときは突っ走って経験して学べばいいと思います」と言葉に力を込める。

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60歳でやりたいことがある