中学受験家庭を悩ませる、受験先の学校選び。校風や難易度のほか、「伝統校と新興校のどちらがいいか」を選択の基準にするという声もよく聞かれます。中高一貫校の取材経験が豊富な教育ジャーナリストのおおたとしまささんは、伝統校と新興校の二項対立を「思い込みを前提にした図式」と評します。両者の違いは?親が知っておくべきポイントは?『子育ての「選択」大全』(KADOKAWA)から、一部を抜粋して紹介します。

MENU ■伝統校の魅力はブランドだけ?  ■ハビトゥスかシラバスか ■学校は時とともに成長する生命体

■伝統校の魅力はブランドだけ? 

 中学受験の志望校選びに関して「伝統校と新興校とどちらを選ぶのがいいと思いますか?」と聞かれたことが何度かありました。最初は質問の意図がわかりませんでした。古い学校を伝統校と呼び、新しい学校を新興校と呼んでグループ化することはわからないでもないですが、そこに価値の対立みたいなものがあるとは私自身思っていなかったからです。

 でも何度かそんな質問を受けているうちに、ようやく真意がわかりました。そういう問いを立てるひとたちはどうやら、「伝統校のブランドをとるか、新興校の先進的な取り組みをとるか」という二項対立の図式を、思い描いているようなのです。

 伝統校の魅力はブランド力だけで教育の中身は古くさいものだけど、新興校は新しい取り組みをしていてこれからの時代に役立つ具体的なスキルを身につけさせてくれるのではないかという思い込みを前提にした図式です。

 なんだかいろいろなものがこんがらがっていて、ときほぐすにはちょっと手間がかかります。

■ハビトゥスかシラバスか

 まず、伝統校であっても教育の中身は常に刷新し続けています。いわゆる名門校といわれるような伝統校ほど、教員の裁量が大きいので、教員がそれぞれに時代の空気を感じながら自ら研鑽し、授業内容を常にアップデートしています。校長が「学校改革だ!」と旗を振らなくても、学校全体として自然に時代に合わせた変化を続けています。それが学校のあるべき姿です。

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NEXT生徒の生き方に影響を与える「学校文化」がある
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