同様に、中高生のうちは、起業家のまねごとをするよりも、しっかりと論語や万葉集(中世・近代ではないですけど)を勉強しておいたほうが、将来グローバルなビジネスパーソンになるとしても、大切ではないかと思います。

 伝統校の教員たちはもちろん、新興校であっても、教養のある教員はそういうことをわかっています。学校説明会ではド派手なことを言っていても、実際にはむやみやたらに表面的な新しさや派手さを追いかけたりはしません。そのほうが本当の意味で子どもたちの将来のためになるとわかっているからです。

 私が伝統校推ししていると思われるかもしれませんし、実際そのとおりなのですが、ある意味当然なんです。だって、一般論として、わが子を預けるなら、経験が浅くて実績もないのに声だけ大きい若造よりも、経験豊かで実績もあるのに謙虚に語るベテランの先生のほうが安心できるじゃないですか。学校も同じです。

 一方で、自分が先駆者となって新しい学校文化をつくっていくんだという気概で新興校に入るなら、それはそれで、十分に意味あることだと思います。新しい学校でしか経験できないこともあるはずです。

 学校は、ただのハコではありません。時とともに成長する生命体のようなものなのです。

(教育ジャーナリスト・おおたとしまさ)

子育ての「選択」大全 正解のない時代に親がわが子のためにできる最善のこと

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教育ジャーナリスト おおたとしまさ

教育ジャーナリスト。リクルートでの雑誌編集を経て独立。数々の育児誌・教育誌の企画・編集に携わる。現在は、幼児教育から中学受験、思春期教育、ジェンダー教育、教育虐待、不登校、教育格差問題まで多岐にわたるテーマで現場取材および執筆活動を行っている。書籍のみならず、新聞から女性誌、各種ウェブメディアまでさまざまなメディアを舞台に、取材成果を発表し、テレビ・ラジオなどへの出演や講演も多数。中高教員免許をもち、小学校教員や心理カウンセラーとしての経験もある。著書は『いま、ここで輝く。』(エッセンシャル出版)、『学校に染まるな!』(ちくまプリマー新書)など80冊以上。

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