和泉慶子さん(左)と采明さんはともに大学2年生。神田明神内のEDOCCO文化交流館にて(撮影/上田耕司)
和泉慶子さん(左)と采明さんはともに大学2年生。神田明神内のEDOCCO文化交流館にて(撮影/上田耕司)

 5月17日、20歳と19歳の女性狂言師2人が、国立能楽堂(東京都渋谷区)の舞台に立つ。和泉元彌、羽野晶紀夫妻の長女・和泉采明(あやめ)さんと、元彌さんの姉で“史上初の女性狂言師”和泉淳子さんを母に持つ、慶子(きょうこ)さんだ。采明さん、慶子さんはともに現役大学生で、いとこ同士。幼いころから切磋琢磨してきた。晴れの舞台を前にした2人に、狂言への思いからプライベートまで、話を聞いた。

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「今年女性狂言師は50年の節目を迎えますが、プロの狂言師の世界で女性は、私と妹の十世三宅藤九郎の2人だけ。私たち女性狂言師の歴史を継ぐのが彼女たち2人」と、和泉淳子さんは語る。

 室町時代から600余年にわたって続いてきた狂言には、大蔵流と和泉流の2流がある。

「和泉流では、大人のプロになるためには、『奈須與市語(なすのよいちのかたり)』と『三番叟(さんばそう)』の2曲を必ず披(ひら)いて(=初演して)いかなければならない」(淳子さん)

 采明さんも慶子さんも、そのうちの『奈須與市語』は既に勤めた。

「ある一定以上の大曲を初めて演じることを“披キ(ひらき)”と言います。采明は昨年12月、『三番叟』を披きました。5月17日の舞台では、今度は慶子が『三番叟』を披き、采明は相手役となる『千歳(せんざい)』を勤めます。2人の女性狂言師に同等の力がないとできません。一生に一度しかやって来ない、かけがえのない“披きの日”となります」(淳子さん) 

 女性狂言師として将来を背負う采明さんと慶子さん。「インタビューを受けるのは初めて」と初々しく答える2人に、家族、親族が見守る中で話を聞いた。

──2人は小さいころから一緒に遊んでいたんですか?

采明「もう、いっぱい。小さいころからずっと一緒です」

慶子「毎日のようにお稽古をするので、放課後はいつも顔を合わせます」

──采明さん、慶子さんはともに大学2年生ということですが、大学では何を学んでいるのですか。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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2人とも3歳で初舞台