「詰め込み」「偏差値」というイメージが強い中学受験。「受験のための勉強は子どもの将来に役に立つの?」「難易度より、子どもを伸ばしてくれる学校を選びたい」といった悩みを抱えている親御さんも増えています。思い切って「偏差値」というものさしから一度離れて、中学受験を考えてみては――。こう提案するのは、探究学習の第一人者である矢萩邦彦さんと、「きょうこ先生」としておなじみのプロ家庭教師・安浪京子さんです。AERA dot.連載14回目の今回は、将来中学受験を考えている、小1のお母さんからの相談です。

MENU ■大手塾での受験の向き不向きがわかるのは小5の夏ぐらい ■「出遅れないために」の発想ではなく ■先取り勉強の貯金は枯渇してしまう ■「子ども」ではなく「家庭」による向き不向きも

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■大手塾での受験の向き不向きがわかるのは小5の夏ぐらい

矢萩:う~ん。ちょっと中学受験をざっくりと捉えすぎな気がしますね。ひと口に中学受験といってもいろいろありますから。学び方自体も、受験の方法も今はいろいろあります。その組み合わせによる向き、不向きはありますが、たとえ学び方が合っていても、場とか人に合わない、という相性の問題もあります。この連載のテーマでもある、「偏差値にかかわらず、いろんな受験を考えてみましょう」という発想であれば、本質的に「中学受験」に向かない、というケースは少なくなっているような気がします。

安浪:このお母様があくまで従来型の、大手塾での中学受験を指しているのであれば「合う/合わない」は確かにあるかもしれませんね。それでも、低学年での判断は難しいです。強いて判断できるのは、「この子は最難関向きかな?」というぐらいかな。つまり「賢いな」という子。でも、小さい頃から熱心に先取り勉強をして、「うちの子、ずっと先の学年の勉強ができます」という子が最難関向きか、というとそれはぜんぜん違うんです。もちろん、もともと能力的に飛び級タイプの子は別ですけど。私の体感からすると、大手塾での受験コンテンツに向いているか、向いていないのかわかるのは5年の夏ぐらいですね。

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安浪京子 矢萩邦彦
安浪京子 矢萩邦彦

安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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