小宮教授はこう話す。

「空き巣や路上犯罪者にはその人の性格によらず、一定の行動パターンがあります。彼らはその家や場所だけではなく、周囲の様子も含めた『景色』を見て、犯行のターゲットを定めているのです。やみくもに犯行に及んでいるのではなく、成功するか否かをしっかり見極めています」

 景色とは、どのようなものか。小宮教授の指摘するポイントは2つだ。

「入りやすいか入りにくいか」
「見えやすいか見えにくいか」

 犯罪者は景色から「入りやすくて見えにくい」と判断すれば、犯行に及ぶ。つまり、侵入が簡単ですぐに逃げられる。さらに周囲の目が届かず、犯行に時間をかけられるという条件が整っている環境だ。

 その一方でも欠けていれば、犯行の対象から外すという。

 シンプルな話に思えるが、一般人が普段から自分の家や地域についてそうした点を意識して暮らしているかといえば、否定せざるを得ないのが実情。小宮教授に防犯指導を依頼する大人たちも、実際に会ってみると理解が浅いことが多いそうだ。

「『景色解読力』と呼んでいますが、『入りやすくて見えにくい』のはどういう場所なのか、というルールさえ知れば、家や近所で危ない場所がわかります。ところが、日本には『不審者』という言葉があるように、『人に気を付ける』という点が重視されてしまっています。犯罪をするという視点で、『あの人は不審だ』と判断するのは不可能に近いこと。それよりも、狙われやすい家や地域の危ない場所を把握し、重点的に対策やパトロールをした方が効果的なのです」

■車の「盗難」でも使われた指摘

 駐車場に柵がなく公道から高級車や高級自転車が丸見え、などわかりやすい例もあるが、一般人には見抜きづらい場所もある。

 例えば、ある家の向かいには別の民家があるが、その民家をよく見ると家の側に窓がなく人の目が届きにくいケース。

 両サイドに家が並ぶ道路でも、塀が高くて実は家から道路が見えない環境などが「プロ」の犯罪者には目を付けられやすい。

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「見られている」と思わせる