【解説】
 お答えします。短気は損気です。子育てはもちろん、物事は短期、中期、長期の三つの目で見ることが大切です。今は話をしてくれない娘さんでも、相談者さんが態度を変えれば、いつか仲良く話をすることができる日が来るに違いありません。

 対人関係に効く名言の宝庫である『論語』には、孔子の弟子・子游(しゆう)が言った言葉として、次のように伝えられています。

「子遊曰く、君に事(つか)うること数(しばしば)すれば、斯(こ)れ辱(は)ずかしめられる。朋友に数すれば、斯れ疏(うと)んぜらる」(里仁第四)

 訳すと、「君主に仕えるのにしつこくすると、かえって軽んじ侮られることになる。友人と交わるのにあまりにしつこいと、かえって疎まれ嫌われる」ということになるでしょう。

「辱」とは、「自信や体面を崩し、ぐったりした気持ちになる」ことを意味します。また、「疏」は「疎」と同じ漢字であり、「疋」は「左足と右足」を描いた象形文字で「左右」がバラバラになる、ひいては「人と人との関係にすきまがある」ことを意味します。良かれと思って、人の世話を焼きすぎると、かえって自信を失い、体面を崩すようなことになってしまうのです。

 職場でも友人との関係でも、一生懸命やればやるほど「あいつはウザい」「面倒くさい人」と思われてしまうようなことはありませんか?

 親子関係も同じです。自分では、なかなか「自分がウザくて、面倒な人間である」と気づくことはできませんから、相談者さんに対する娘さんの態度は、社会と自分の関係を映し出す鏡なのかもしれませんね。

『論語』には、「九思(きゅうし)」といって、君子として常に心がけるべき九つの心得が書いてあります。

「視ることは明(めい)を思い、聴くことは聡(そう)を思い、色は温を思い、貌(かたち)は恭(きょう)を思い、言(ことば)は忠を思い、事は敬を思い、疑わしきは問うを思い、忿(いか)りには難を思い、得るを見ては義を思う」(季氏第十六)

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