グッズの売れ行きは厳しい(c)朝日新聞社
グッズの売れ行きは厳しい(c)朝日新聞社

 東京五輪の開幕が約1か月後に迫っているが、新型コロナウイルスの感染拡大が収束せず開催への異論が渦巻く中、公式グッズの売れ行きは厳しい。なかには東京五輪の組織委から「売れ行きに関する話を外部に出さないように」などと“かん口令”を敷かれたメーカーも。「大量に売れ残ってゴミと化すことは覚悟しています」。業者からは悲痛な声が漏れる。

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 東京五輪・パラリンピック組織委員会とライセンス契約を結び、公式グッズを製造するメーカーは約90社ある。

 メーカーは小売価格の5~7パーセントをロイヤリティー(権利使用料)として組織委員会に支払う仕組みだ。実際に売れた数ではなく、製造数に応じたロイヤリティーが生じる。さらに小売価格の2パーセントを、販売促進支援のための経費として支払う。

 複数のメーカーに売り上げの現状を尋ねたが、厳しい状況をにおわせつつも「組織委を通して許可を得てからではないと、取材に応じられません」「話せないことになっている」などと回答を控える担当者が多かった。

 匿名を条件に答えてくれたあるメーカーの担当者は昨年の春ごろ、組織委から連絡を受け「グッズの売れ行きに関することは外部に言わないように」という趣旨の“かん口令”を敷かれたという。「突然の連絡でしたし、文書で通知を受けたわけではなく口頭だったので真意は図りかねますが、時期も時期でしたので、五輪に関してマイナスなことは言わないようにという『口止め』のような印象を受けましたね」

 この担当者はグッズの売れ行きについて、暗い見通しを口にする。

「弊社では数万点のグッズを準備しましたが、当初目標の3分の1でも売れてくれれば万々歳だと思っています。ただ、海外からの観光客が見込めず、国内でもこれだけ五輪反対の人が多い中では3分の1ですら難しいでしょうね。詳細な数字は明かせませんが、大量の売れ残りが出てゴミになることは覚悟していますし、相当な額の赤字が生じることは確実です」

 として、「公に言えないだけで、メーカーさん皆が同じ状況に頭を抱えていると思いますよ」と話す。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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