マスクを購入した40代の男性の思いは複雑だ。

「選手たちを応援したいので、ランニングの時に使おうと買いました。ただ、電車だとか公共の場では着けないと思います。これだけ反対論が強い中で、五輪を応援しているってオープンにはしづらいし、もし医療従事者の方が見たらどう思うだろうかって考えてしまいます」

 日用品を購入ついでに小学生の長男とたまたま立ち寄った30代の主婦は、さらに手厳しい。

「かわいいグッズが多いので売れ残っちゃったらかわいそうですよね。ただ、五輪やるなら子どもの運動会も自由にやらせてよって、納得がいかない思いも持っています。首相や小池さん(都知事)たちが『五輪をやらせてください』って頭を下げるなら、支えようかなって思う人も出るかもしれませんけど、いろんな声を無視して勝手に突き進んでいる感じですし。周りのママ友も反対の人が多いので、何を買うか買わないかはまた考えたいと思います」

 五輪が始まったら少しは売れてほしい、メーカーの思いは切実だ。別のメーカーの関係者はライセンス契約上、自由な宣伝活動ができないことになっていると説明した上で、こんな希望を口にする。

「廃棄は避けられないとはいえ、少しでも減らしたいのが本音です。五輪終了後は商品の宣伝を自由にしたり、大幅な値引き販売を許可するなど、組織委には柔軟な対応をお願いしたい」

 こうした問題についても、組織委には「見えないふり」をしないことを求めたい。

(AERA dot. 編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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