・「参よ。私の生きる道は、たった一つのことで貫かれている」
「先生の道は忠恕、ただそれだけだ」

【解説】
 お答えします。「妻の育児に不満」? 何をおっしゃっているのですか。大事な息子さんの食事だと言うのなら、自分で率先してお作りなさい! 自慢ではありませんが、私は、息子が生まれてから朝夕食の支度は、買い物も含めてほとんど自分でしています。

 妻に炊事を押しつけて、不平不満を言うなんてもってのほかです。出産はもちろん、産後の育児も女性には大変な身体的・精神的な負担がかかります。子どもは幼いうちは、どうしても母親をさがして泣きわめきますし、2歳2カ月という年齢であれば、毎晩1回か2回は起きて泣く子もいるでしょう。相談者さんの妻は睡眠不足でフラフラのはずです。
 
『論語』にこのような話が記されています。

「唐棣の華、偏として其れ反せり。豈に爾を思わざらんや。室の是れ遠ければなり」

 これは、当時の歌謡で、「ニワザクラの花が、美しくひらひらと揺れている。あなたを恋しいと思うのだけど、なにぶんあなたのお住まいが遠すぎて──」という意味です。

 この歌を受けて、孔子は一言「未だ之れを思わざるなり。夫れ何の遠きことか之れ有らん」と感想を述べます。

「遠いと思うのは、相手の女性を心の底から思ってはいないから。本当に会いたいと思うのであれば、家の遠さぐらいはふっとぶ。なんの遠いことがあるものか」という意味で、「恋しいが家が遠い」と弁解じみたことを言う男性に、愛情のあり方を戒めたのです。

 おわかりでしょうか? 息子さんを本当に大事だと思うのであれば、相談者さんが食事を作ることなど、なんともないことだと思いませんか。もちろん40代のお父様は忙しいことと思います。40、50代の働き盛りの時に、「子どもの食事を作る時間などない」と思われるでしょう。しかし、仕事同様、家庭も大事ですよね?

 孔子は、温かく、優しく、そして強い有名な言葉を残しています。

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