2500年前の思想家・孔子の教えをまとめた「論語」は、生き方の指針となる言葉の宝庫だ。「仁(=思いやり)」を理想の道徳とし、苦しんでいる人の導き方や、苦境に立たされた時の責任の取り方など、迷える現代の子育てにも役立つ言葉がたくさんちりばめられている。親の悩みに対する処方箋として、中国文献学者で、大学生の息子をもつ山口謠司先生が、論語の格言を選んで答えるコーナー。今回は、「休日に家族でお出かけできず、子どもの成長にマイナスになるのでは」という3児の母親のお悩みについて考えます。

※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

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【相談者:3人の子どもをもつ30代母親】
小学2年女子、5歳男子、2歳男子の母です。土日にママ友家族があちこち出かけている姿をインスタグラムで見るとうらやましく、子どもたちに何もしてあげられない自分を責めてしまいます。というのも、末っ子はまだ2歳で聞き分けがないうえにイヤイヤ期も重なって、子どもたち3人を連れて外出するのがとにかく面倒なのです。本当は上の子2人にはアスレチックや博物館、遊園地などに連れていったり、旅行したりしたいのですが、「魔の2歳児」が一緒だとままならず、近所の公園しか行くことができません。いろいろな体験をさせてあげられないことは、やはり子どもの成長にはマイナスになってしまうのでしょうか。

【論語パパが選んだ言葉は?】
・法語の言(げん)は、能(よ)く従う無からんや。之(こ)れを改むるを貴(とうと)しと為す。巽与(そんよ)の言は、能く説(よろこ)ぶ無からんや。之れを繹(たず)ぬるを貴しと為す。説んで繹ねず。従うて改めざれば、吾(わ)れ之れを如何ともする末(な)きのみ (子罕第九)

・兄弟には怡怡(いい)如(じょ)たり (子路第十三)

【現代語訳】
・権威ある言葉を聞くと、誰だって服従する気持ちになる。しかし、ただ服従するだけでなく、自己を改革することが大切だ。穏やかな言葉を掛けられると、誰でも嬉しくならずにはいられない。しかし、嬉しがるだけでその言葉を玩味しないならば、そのような人には手の施しようがない。

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山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/文献学者・中国学者。大東文化大学教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞。『ステップアップ0歳音読』(さくら舎)『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など著書多数。母親向けの論語講座も開催。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族

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