国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」は、築後36年ごろに3回目の大規模修繕工事を実施することとしています。この時期は、当初から居住している人の住宅ローン返済が終わるとともに、マンションの建物・設備も、区分所有者・居住者も大きな転機を迎えます。 

 適切な修繕や改修が実施されていないマンションは、老朽化が急速に進みます。反対に着実にメンテナンスを実施してきたマンションは、居住性がさほど低下していないはずです。人が高齢になると、それまでの生活習慣によって健康状態に個人差が出てくるのと似ています。 

 建替えが容易にできないなかで、マンションの将来を考えるためには、自分たちのマンションの条件を客観的に知ることが必要になります。そして築50年、75年、100年といった将来を展望するビジョンやマネジメント計画を検討し、それをもとに新しい視点で長期修繕計画をつくることが必要です。 

■100年マンションを目指す動きがスタート 

 かつて鉄筋コンクリート造の建物の寿命は、財務省令の減価償却期間である耐用年数の60年(1998年度税制改正で47年に短縮)という年数が物理的な寿命と混同されていました。しかし、実際には100年以上もたせられることがわかってきました。また、技術が進歩してきたため、築年数が経過した建物をリニューアルすることができるようになりました。 

 コンクリートの躯体の耐久性が100年、あるいはもっと長ければ、建物の仕上げや設備機器を新しくすることで、文字通りマンションを終のすみかにすることもできます。 

 築後36年程度を目安に行う3回目の大規模修繕工事を機会に、建物としてのマンションとともに、区分所有者・居住者の生涯の生活設計についても考えたいものです。 

 集合住宅の歴史が長い欧米では築年数を経るほど価値が上昇する「ヴィンテージマンション」も珍しくありません。 

 マンションが本格的に普及したのが遅い日本では、「ヴィンテージ」と呼べるマンションはまだ多くありませんが、管理組合が経営という視点をもち、ハードだけでなくソフトの仕組みを充実させることで長寿命化を目指す動きが増えています。 

 また、マンション管理やリフォームなどに関係する団体や専門家が参加するヴィンテージマンションプロジェクト推進協議会も設立され、活動しています。 

(文/飯田太郎、監修/マンション計画修繕施工協会) 

※週刊朝日MOOK「資産価値を守る!マンション管理・修繕・建替え大全2021」から