わが子に英語を身につけさせようと、英語教室に通わせたり、英語教材を与えたりする親も多いだろう。しかし、英語か日本語かにかかわらず、言葉を使ったコミュニケーションで重要なのが、「言語技術」なのだという。「話す」「聞く」「読む」「書く」に加え、「思考」を効果的に育むのが、言語技術の教育だ。コミュニケーションの土台をつくるこの教育を取り入れる小学校が増えている。現在発売中の『AERA English特別号「英語に強くなる小学校選び2021」』では、言語技術の専門家に話を聞いた。

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「理解しやすく考えを提示する力や論理的な話し方、分析的な文章力は生まれながらの才能ではなく、反復練習によって誰でも身につけられます」

 こう話すのは、つくば言語技術教育研究所で所長を務める三森ゆりかさんだ。

「言語技術」は英語では「Language arts」と呼ばれ、言葉を使ったあらゆるコミュニケーションの骨格を成すと考えられている。欧米では広く学校教育に取り入れられており、中高生のころにドイツで言語技術の教育を受けた三森さんは、日本の学校や企業で指導を行う。

 言語技術では、「書く」「話す」に加え、「討論・議論」「論理的思考」といった16の力を養う。

「『言語技術』では数学の数式を覚えるようにスキルを積み上げ、“型”を増やして思考や表現の幅を広げます。ドイツでは、結論から述べる構造や接続詞の使い方などを含め、物語文、報告文、議事録、小論文といったあらゆる文章の書き方を学びました」(三森さん)

 一般的な「国語」の授業と違い、対話や説明などの発信と多読に力点が置かれている。言語技術の考え方は、文部科学省の学習指導要領で強調されている「思考力」「判断力」「表現力」の育成にも重なることから、多くの学校から注目されている。

 言語技術は、国際社会で欠かせないスキルでもある。

「主張があいまい、あるいは結論までの話が冗長で周囲を戸惑わせるなど、英語が流暢でも国際社会で苦戦する日本人は少なくありません。それは、国際社会で常識である母語による思考、判断、表現の“型”がないからです」(同)

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菅野浩二
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