親がわが子の教育を考えるとき、真っ先に浮かぶのは「この子に幸せな人生を送ってほしい」ということではないだろうか。先行きが不透明な現代において、わが子の幸せのためにはどうやって進学先を選べばいいのだろう。現在発売中の『AERA English特別号 英語に強くなる小学校選び2021』(朝日新聞出版)では、「幸福学」を研究する前野隆司さんに、子どもの幸福度を高めるための学校選びについて、話を聞いた。

MENU ■学校選択にも役立つ 幸せの四つの因子 ■幸福は連鎖する。今、幸せですか?
「幸せのメカニズム」研究の第一人者、前野隆司さん(写真=本人提供)
「幸せのメカニズム」研究の第一人者、前野隆司さん(写真=本人提供)

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 親はわが子の幸せを願う。だからこそ、よりよい教育を望むのだ。しかし一方で「有名大学・有名企業に入ることが幸せに結びつくわけではない」とも言われて久しい。そもそも「幸せ」なんて人それぞれ。わが子を幸せにする育て方なんてあるのだろうか?

「よく言われるんです。幸せなんて定義もバラバラ。幸せの研究なんてできるのか、って」

 そう言って笑うのは「幸せのメカニズム」研究の第一人者、前野隆司さんだ。哲学でも宗教でもなく、心理学と統計学を用いて、「幸せ」になる心の持ちようを解き明かしている。その結果、高い学歴や高収入の仕事などは、「幸せな人生」には直結しないことがわかったと言う。

「金・モノ・地位で得られる幸福は、長続きしにくいのです。長期間続く幸せに必要なのは健康や自由、愛情など目に見えない要因です。なかでも私は長期的な幸せをもたらす『心因的な要因』を研究しています。簡単に言うと、どんな心の持ち方をすれば幸せになれるのか、です」

 日本人1500人にアンケートをとってデータを分析したところ、「自分は幸せだ」と感じている人には明らかな共通項が見られたという。それが幸せの四つの因子(図参照)だ。

「幸せになるための条件は複雑で無限にあると思われがちですが、実はたった四つなのです。『やってみよう』という主体性、『ありがとう』という感謝の心、『なんとかなる』という楽観性、『ありのままに』いられる自己肯定感。この四つをバランスよく持っていれば、子どもでも高齢者でも幸福度は高いのです」

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神素子
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