歯周病は口の中で歯周病菌が繁殖することに加え、免疫力の低下、喫煙などある種の生活習慣、生まれつきの歯周病のなりやすさ(遺伝)、年齢(加齢とともに起こりやすくなる)、性別(女性)、歯並びの悪さやかみ合わせの悪さなどが複雑にからみあって起こります。

 仕事が忙しい、疲れている、という人は免疫力の低下が起こっている可能性が高く、これが歯周病を悪化させている引き金と考えられます。免疫力が低下すると歯周病菌の活動を抑えきれなくなり、歯みがきをきちんとしていても症状が悪化することがあるのです。

 また、ストレスや緊張があると自律神経のうちの交感神経が過剰に働き、その結果、白血球の一部である顆粒球が増加して炎症性物質が増えるという指摘もあり、これが歯ぐきの炎症を引き起こしている可能性もあります。

 天気についても、その変化が交感神経やホルモンに何らかの影響をおよぼしているのではないかと森田学歯科医師は指摘しています。

 いずれにしても、私たちのからだはさまざまな要因から影響を受けます。自分なりに「これが歯周病の悪化につながりそうだ」というものがわかっている人は、それをできるだけ避けること、あるいは天気の変化のように避けられないものであれば早めに歯科に行く、という方法がすすめられます。

 ただし、歯周病の急性発作の要因としてここのところ圧倒的に多いものはストレスでも、天気の変化でもなく、「食べ過ぎ」です。

 これは新型コロナウイルス感染症の影響です。というのも、「急に痛くなった」と駆け込んでくる患者さんの多くが自宅でリモートワークをしている人たちで、口の中を見ると以前とは違って、歯がひどく汚れているのです。患者さんの答えも、

「自宅で仕事をしていると、つい、お菓子を食べてしまいます」

 が定番です。最近はこうした患者さんがあまりに多いので、「コロナ歯周病」と名づけています。

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若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

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