こうした変化の裏に何があったのだろうか。民放ドラマプロデューサーは解説する。

 「木村さんはもうすぐ50歳。もちろん若い頃から変わらぬイケメンぶりですが、さすがに歳を重ねていつまでも前に出る年齢でもない。昭和の大スターも、みんないつかは“見守り役”になります。『水戸黄門』の里見浩太朗さんのように、主人公として名前は出ているけど、ドラマを動かすのは助さんや格さん、うっかり八兵衛などのキャラクターですよね。黄門様は最後に『もういいでしょう!』と言えばいいんです」

■マネジメントの方向性も変わったのか

 木村も徐々に年齢を重ねていく中で、役者としてステージを替えていかなければ生き残れない。当然といえば当然なのかもしれない。

「最近の木村さんの変化はむしろ遅いともいえます。そもそもドラマのキャスティングがスタートするのは放送の1年以上前だったりしますし、映画なら2~3年前からというものもあります。『教場』に関しては企画から制作に至るまでが難航していて、急転直下で木村さん案が出たという話も聞きました。お互いに方向性を模索する中で、ちょうどいいタイミングだったのかもしれません。2016年にSMAPが解散となって、その後ソロで俳優として歩んでいくことになったときに決めた方針が少しずつ花開いてきたんでしょう」(前出のプロデューサー)

 一方で、女性週刊誌の記者からはこんな見方も。

「やっぱりSMAP時代はマネージャーの意向が強かった。彼女が手掛ける案件はその多くが大ヒットとなり、元々ジャニーズ内で落ちこぼれだったSMAPをトップアイドルに押し上げた。ただ、それぞれのメンバーがいつまでもメインでトップでなければいけなかった。木村さんはまだしも、草なぎ剛さんなどは、もしかしたらもっとはやくバイプレイヤーに回っていたほうがよかったかもしれません。稲垣吾郎さんは映画『十三人の刺客』で、悪役を演じてかなり評価が上がりましたよね。木村さんはもちろん、トップスターですから主演に収まるのはもちろんですが、うまく周りを生かしていく方向にシフトできるようになったのは、解散で飯島氏の手から離れ、マネジメントの方向性が変わったからだと思います」

 ドラマウォッチャーの中村裕一氏は最近の木村の変化についてこう分析する。

「年齢に合わせた仕事選びや役づくりに苦心する俳優が多い中、“木村拓哉”という圧倒的かつ絶対的なブランドをしっかり維持しつつ、他を引き立てる立ち回りにも柔軟に対応しており、非常にうまく移行している印象です。キャリアを重ねればどうしても演技の深みや幅広さが求められますが、そんなプレッシャーをはねのけて期待に確実に応えると共に、国民的アイドルとしてはやし立てられても決して自分を見失わないセルフプロデュース能力は、同世代の芸能人の中でもズバ抜けているのでは。本格的に俳優業をスタートした20代から40代まで、それぞれの年代で代表作を持っている彼が50代に突入した時、どんな作品を選ぶのか、どんな演技を見せてくれるのか非常に楽しみです」

 周りを活かし、最終的に自分の評価を高めていく――やはり木村拓哉は“持っている”のだろう。(今市新之助)