当然ながら動脈硬化が心臓の冠動脈などの血管に発生し、血栓ができて詰まり血流が途絶えると心筋梗塞に、脳の血管が詰まると脳梗塞になります。動脈硬化もまた、無症状で進行していく病気であることから、予防・対策を心がける必要があります。

■誤嚥性肺炎

 誤嚥性肺炎は、誤嚥にともない口の中の食物や唾液などが病原菌とともに気管内に入ることで起こる肺炎です。高齢者の肺炎は死亡原因の上位であり、その多くが誤嚥性肺炎です。原因となる菌には、口の中の歯周病菌も含まれることがわかっています。

 また、P.g菌によって白血球から産生される炎症性物質は気管の粘膜を損傷させることで、これら肺炎の原因菌を付着、増殖させやすくすることがわかっています。一方で、歯周基本治療や口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防に効果があります。全国11か所の特別養護老人ホームの入所者を対象にした調査で、2年間にわたり口腔ケアを継続した群では肺炎の発症率が11%(対照群では19%)と、その効果が明らかになっています。

※『続・日本人はこうして歯を失っていく』より

≪著者紹介≫
日本歯周病学会
1958年設立の学術団体。会員総数は11,739名(2020年3月)。会員は大学の歯周病学関連の臨床・基礎講座および開業医、歯科衛生士が主である。厚労省の承認した専門医・認定医、認定歯科衛生士制度を設け、2004年度からはNPO法人として、より公益性の高い活動をめざしている。

日本臨床歯周病学会
1983年に「臨床歯周病談話会」としての発足。現在は、著名な歯周治療の臨床医をはじめ、大半の会員が臨床歯科医師、歯科衛生士からなるユニークな存在の学会。4,772名(2020年3月)の会員を擁し、学術研修会の開催や学会誌の発行、市民フォーラムの開催などの活動をおこない、アジアの臨床歯周病学をリードする。