一方で、管理の難しさなどの問題点もあります。腹膜透析をおこなうには、患者さんの病状の変化をつねに把握し、それにあわせた適切な透析処方を出すことが必要です。受診回数が少ない分、患者さんの残された腎機能の状態や透析量、体液量などをきちんとコントロールしないと悪化してしまうこともあるため、注意が必要です。このような、腹膜透析の管理をしっかりできる医師や看護師などの専門家が少ないこと、患者さんへの情報提供が少ないことも課題といえます。
このような課題をクリアするために、国も適切な治療選択の推進を支援しています。2018年度の診療報酬改定では、「腎代替療法導入期加算1、2」という項目が新設されました。これは、人工透析や腎移植などの腎代替療法について患者さんに十分な説明をおこなっている施設(加算1)や、腹膜透析の適切な導入と指導管理、さらに腎移植の推進に関わる取り組みを実施している施設(加算2)などに診療報酬を加算するというものです。これにより、人工透析=血液透析でなく、患者さんがよりよい腎代替療法を選べることが促進されると見込まれます。
高齢化に伴い増大し続ける医療費を削減するためにも、高齢患者の在宅医療の推進や、地域包括ケアの重要性がいわれています。患者さんが在宅で透析治療を継続しながら、社会生活を維持できるようにするためにも、腹膜透析の普及が期待されます。
■透析も服薬などと同じ腎不全の治療法のひとつ
慢性腎臓病を患う読者の方にお伝えしたいのは、二つです。まずは、人工透析にならないために、どう治療して腎機能を維持していくかを考えていきましょうということ。そして、医師から人工透析をすすめられた場合、腎代替療法についての正しい知識を得て、あらかじめ適切な準備をして腎代替療法の選択をすることで、よりよい社会生活を営めることです。
人工透析と聞くと、「もう仕事も何もできない」と社会から取り残されたような気持ちになる人もいるかもしれません。しかし、日本の透析医療は世界でもトップレベルであり、安心して受けられるものです。使用する薬剤や機器を含め、透析医療は大きく進歩しており、現在では透析をしながら健康な人と同じように生活できる人も少なくありません。
人工透析も、服薬や食事療法などと同じ、病気の治療法のひとつと考え、前向きに治療に取り組んでいただきたいと考えます。(文・出村真理子)
※週刊朝日ムック『「このままだと人工透析です」と言われたら読む腎臓病の本』より