では、スマホの「次」とは何でしょうか? スマートフォンに取って代わる、我々の生活にとって欠かせない重要な存在となる「次」のモノです。

 スマートスピーカーでしょうか? 自動運転の電気自動車でしょうか? スマートウォッチ? VRグラス? タブレットやPCがなり得るでしょうか。

 どれをみても、既存の製品では、「スマホの次」たり得る存在を見出すことはできないでしょう。色々考えた結果、結局「スマートフォンの方がいいじゃないか」という結論に達してしまうのです。その理由は、いずれのデバイスも、現在スマートフォンを前提に成立し使われているからかもしれません。

 9月にカリフォルニア州サンノゼで、Facebook傘下のVR企業、Oculusが開いたカンファレンスで、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは、「世界のVR人口を10億人にする」と宣言しました。しかしその次の瞬間会場で筆者は「どうやって?」という疑問が浮かびました。

 もちろん、たくさんのVRヘッドセットが販売され続ければ、いずれ10億という数字に到達するでしょう。しかし、毎年1億台売れたとしても10年かかります。世界最大のSNS企業をもってしても、光学的にも高度な電子機器を年間1億台「製造・販売すること」は、そう簡単にはできません。

 それだけの素材となる資源を確保し、今ですら逼迫している製造ラインを確保し、販路を確実に用意していく必要があります。様々な環境や物理的な問題が存在していることを痛感させられるのです。

 また特にAppleは、スマートフォンが「最後のパーソナルデバイス」だと位置づけてビジネスに取り組んでいるかもしれません。

 もちろん、iPhoneをサポートするApple WatchやAirPods、将来登場するかもしれないARグラスといった、人間の感覚を拡張するデバイスは追加していくかもしれません。しかしApple自身も、年間2億台規模で製造し世界中の20億人に行き渡らせるような「スマホの次」のデバイスを想定していないのではないでしょうか。

 そのため、今後販売台数が伸びないと分かると、再利用した資源の活用や、「長持ち」を製品の特徴に加えました。今後も販売台数が重要だと考えていたなら、買い換え頻度が下がる事を意味する「長持ち」をアピールすることはなかったでしょう。


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