2019年1月1日に、元号が変わるという。そもそも元号って何なのだろうか? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞編集委員・宮代栄一さんの解説を紹介しよう。

1989年1月7日、新元号を発表する小渕恵三官房長官(当時)。「平成」以外の候補に「修文」「正化」などがあったといわれている (c)朝日新聞社
1989年1月7日、新元号を発表する小渕恵三官房長官(当時)。「平成」以外の候補に「修文」「正化」などがあったといわれている (c)朝日新聞社

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 新聞などのメディアが先日、政府が2019年1月1日をもって、元号を新たに定める(改元する)ことを検討しているとのニュースを流した。これは現在の天皇陛下が生前退位し、新しい天皇陛下が即位されることに伴うもので、もし、この通りになれば、いま私たちが口にしている「平成○年」といった表記は来年いっぱいで使えなくなる。

 元号は特定の時代(期間)に対してつけられる称号(呼び名)のことで、「明治」「大正」「昭和」などもこれにあたる。

 日本では西暦645年に「大化」という元号が使われたのが最初とされ、これまで「天平(てんぴょう)」「享保(きょうほう)」「慶応(けいおう)」など200以上の元号が使われてきた。

 これほど多いのは、以前は天皇の交代のとき以外でも自由に元号を変えることができたからで、「一人の天皇に対し元号が一つ」となったのは、「一世一元(いっさいいちげん)の制」という天皇の命令が出された1868年以降のこと。1979年には元号法という法律もつくられ、制定までのしくみが整えられた。

 ちなみに、元号という習慣はもともとは中国のもので、皇帝や天皇などの君主が空間だけでなく、時間をも支配していることを示す意味があったとされる。

 元号法によると、元号は、総理大臣が選んだ数人の人物がいくつかの候補を考え、衆議院や参議院の議長・副議長らの意見を聞いたのち、政府の閣議で決定される。

 国民の理想としてふさわしい意味がある、漢字2文字である、書きやすい、読みやすい、これまでに使われていないなどの条件があり、「平成」は、中国古代の『史記』という文献に出てくる「内平外成」、同じく『書経』の「地平天成」という表現からとられた。近年は、世の中の平和や正しい政治の達成といった意味を持つ言葉が選ばれることが多いようだ。

 ただし、元号が変わる際には、さまざまな印刷物や電子データの表記もいっせいに変えることになるため、社会的な影響が大きい。このため、政府は年の途中ではなく、きりのよい、元日での改元を目指しているが、担当の役所である宮内庁と調整する必要があり、正式には決まっていない。(解説/朝日新聞編集委員・宮代栄一)

【元号の雑学クイズ】

Q1:最も長く続いた元号は?
A1:「昭和」(1926~89年)の64年。次いで「明治」(1868~1912年)の45年。室町時代の「応永」(1394~1428年)は35年

Q2:最も短かった元号は?
A2:鎌倉時代の「暦仁」。1238年11月23日~39年2月7日の約2カ月半

Q3:元号で最も多く使われた漢字は?
A3:使用72字中、「永」が29回。次いで「元」と「天」が27回、「治」が21回

【キーワード:生前退位】
天皇や国王などの君主が、亡くなる前に位を退くこと。譲位ともいう。海外ではかなり普通に行われているが、日本では、明治時代以降、実施されたことはなかった。だが、今の天皇陛下が高齢による健康面での不安を訴えられたため、政府が退位を可能とする特例法案をつくる方向で協議が進められている。

※月刊ジュニアエラ 2017年3月号より

ジュニアエラ 2017年 03 月号 [雑誌]

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宮代栄一
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