長田さんは、猪鹿と石川をかけて「isica(イシカ)」という名称でブランドを立ち上げ、狩猟や有害駆除で捕獲した猪鹿革で作った製品を販売している。過疎高齢化が進む山間部では、イノシシやシカの生息数が増加し、農作物の被害が拡大していることから、狩女の会の活動は石川県内で注目を集めている。

 「“狩女”の道は、まず食から……」と思う記者、ジビエについて聞いてみた。獣肉を使った料理といっても、ぼたん鍋を1度食べたことがあるくらいだ。日常的な食に獣肉をどう使うのか? 下処理が面倒ではないのか? 

「牛を、豚はイノシシ、鶏は鹿に置き換え、メニューを考えてみてください。熊肉はシチューなどの煮込み料理や焼き肉、イノシシ肉はカツ、しゃぶしゃぶ、野菜炒めに入れるなど、鹿肉はローストやソテーにといった具合です。地元で手に入る獣肉は新鮮なので臭みがありません。脂身はくどくなく、甘くておいしいですよ」(長田さん)

 「食通だけの楽しみ」と思っていたジビエが身近に感じられる。ところで、幼い男児を抱く長田さんに年齢を聞き、45歳と言われて驚いた。肌つやがよく、30代半ばに見える。5児の母で、第4子から第5子出産までは14年間空いていたとか。

「イノシシはビタミンB1、鹿は鉄分を多く含むなど、獣肉は身体にいい食材です。私はジビエを日常食とすることで冷え性が改善されました。40代半ばにして妊娠・出産できたのは自然豊かな環境に住み、“狩女”になったからだと確信しています」(長田さん)

 全国で熊の被害や農作物被害が深刻な昨今、自然界のバランスを保つのは“狩女パワー”かもしれない。(ライター・若林朋子)