だが、現代ではこのような地域社会での相互扶助機能は低下し、貧困はより深刻化しているのが実態だ。厚生労働省によれば、昨年、日本の子供の貧困率は16.3%を達し過去最高を記録した。実に6人に1人が「貧困」という計算だ。

 東山さんは、この貧困問題は今に始まったことではなく、「日本の社会のツケ」であるとし、すべては大人たちの責任だと本書で指摘している。寛容さが失われてしまったといわれる今、日本社会で最も必要なのは「優しさ」だとしながら、こう続ける。

「もしいま、泣いている子どもを見かけたら、僕は『ほら、お友達が泣いているよ』と、自分のそばにいる子どもたちに言うだろう。彼が前に一度も会ったことなくても『お友達』。どこの国の子どもだとか、親が誰だとか、何をしているとかは関係ない」(本書より)

 そのような態度で、大人が子どもに接すれば、子どもは誰であれ「お友達」を気にかけるようになっていくという。その裏には、東山さんが川崎での少年時代に育まれた強いメッセージが隠されている。

「まず、大人が手本を示さねば。人は人を差別するときの顔が最も醜いと僕は思っている。大人として、それは子どもたちに教えなければならないと思う」(本書より)

 貧困のみならず、ヘイトスピーチや同性愛、部落問題など、マイノリティへの差別に関する問題を数多く抱える日本。今、この“優しさ”をどう次世代に伝えていくかがが、大人たちに問われているではないだろうか。