第1330回 母への心配を和らげてくれるモモ 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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第1330回 母への心配を和らげてくれるモモ

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 わが家に柴犬のモモ(写真、11歳、雌)が来てから3年がたった。

 モモは、繁殖犬として飼育されていた。繁殖犬というと毛が抜け、ボロボロになった犬を想像していたが、モモは、子どもを何匹も産んだとは思えない毛の艶やかさだった。唯一、乳首から、たくさん子犬を育てたことがわかる程度だ。

 しかし、精神状態が今まで飼った柴犬とは違った。

 わが家に来た当初は、まったく懐かず、ケージの外では体を触らせない。庭も自由に歩けない。すべての物音に震え、すべての動くものを恐れ、まっすぐ歩くことができなかった。

 人間に対する信頼はゼロ。今まで、人間によってどれだけ怖い思いをさせられてきたのか、その脅え方でわかった。2年目には原因不明の脱毛症を発症し、60%の体毛が抜けた。原因がわからないので、治療のしようもない。

 毛のない部分を隠す服を作り、あきらめていた頃、薄い毛が生え始めた。1カ月後には、元の艶やかな毛のモモに戻った。今思えば、人間が精神的なことで円形脱毛症になったりするのと同じく、新しい環境になれるのに必死で、そのような症状が出たのではないか。
 私の母は父の介護をしながら、モモを、散歩と聞けばしっぽを振って喜び、母が食事をする際は「何かちょうだい」という顔で近づくまでに心を開かせた(お座り、お手までできるようになった!)。

 散歩中、恐怖でリードを振りはらい逃げたモモを痛い膝で追いかけた日や、心が通わずつらい思いをした日がたくさんあったと思う。

 今、私は、外国で暮らし、母を心配する毎日だが、母のそばにモモがいることが心配を和らげてくれている。

 モモが今、「人間ってあたたかいな」と思っていてくれたらうれしい。

[平谷恵子さん イタリア/42歳/日本語講師]

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(更新 2019/6/28 )


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