- コラム・小説
- 記事
大特価2万円! 値段につられた若い女性がその子犬を買った。けれど、当然ながらトイレの躾(しつけ)はまだだし、なにより噛み癖がひどくて手に負えない。そこで翌日、彼女は子犬とおまけについてきた餌1袋を、ただで知り合いに譲ってしまった。こうしてわが家にやって来たのがビーグル犬のモモ(写真)だ。
モモは病院で「生後5カ月は過ぎていますね」と言われただけあって、ペットショップのガラス越しによく見るあのコロコロした可愛さは既になく、顔も体も中途半端に細長い印象は否めなかった。
おまけになぜか朝4時から鳴きだし、その声はビーグルの別名「森のトランペッター」にふさわしく、響きわたった。わが家が田んぼの真ん中でなければ、すぐに苦情が来ただろう。
そこで日も昇らないうちから散歩に出たが、睡眠不足よりも厄介だったのが件(くだん)の噛み癖だった。
私の両手は指先から二の腕まで、時には脇腹や太ももも赤紫に腫れ上がった。しかしこの癖は、噛みついたら遊びをやめるという方法で、1カ月後には何とか直すことができた。
そんな彼女ももう12歳。今では夜の9時になると、散歩に行こうと私の背中を遠慮がちにトントンたたく。
しかし、仕事と母の介護に疲れた私がリビングで横になっている時には起こしもせず、大きなおなかを丸出しにしてゴーゴーといびきをかいて一緒に寝るという、聞きわけのいいおばさんワンコになった。
老人世帯のわが家。ヘルパーさんや看護師さんに毎日来てもらっている。みなさん、吠えもしないでおとなしく座っているモモちゃんには癒やされると朗らかにおっしゃる。だから当分、みんなの癒やし系ワンコで頑張ってもらいたいと願うのは人間の勝手だろうな。
あわせて読みたい
別の視点で考える
特集をすべて見る
この人と一緒に考える
コラムをすべて見る
カテゴリから探す
-
ニュース
-
教育
-
エンタメ
-
スポーツ
-
ヘルス
-
ビジネス